華道家 新保逍滄

2019年12月10日

生け花上達のコツ(4)

「どうしたらもっと生け花が上手になるのだろう」と自分の問題として考えてきました。 また、「どうして外国人に生け花を教えるのはこうも難しいのだろう」ということも、大きな問題でした。 問題の根本はどこにあるのか? どうしたら状況を改善できるのか? 実は、このブログで今まであれこれ書いてきたことに、すでに私の答えは出ているように思います。ここでは、改めてこの難問への答え、そして具体的な解決方法まで私なりに考えてみます。 生け花上達のコツ(1) 生け花上達のコツ(2) 生け花上達のコツ(3) 外国人に生け花を教える難しさ(1) 外国人に生け花を教える難しさ(2) 外国人に生け花を教える難しさ(3) https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/11/blog-post_26.html まず結論から。 生け花上達のコツは、短距離走的な練習(瞬発力)と、長距離走的な練習(持久力)双方を継続させること。 前者は時に一つの作品制作に、とことん精魂込めてみるということ。これは常にそうあればいいのでしょうが、なかなかそうもいかないのが実情。 後者は、基本の徹底反復。毎日欠かさず何年も継続させること。 この二つだと思います。実は、私が特に重要だと考えるのは後者。外国人に教える際に、大きな障害となっているのもこの持久力に関わる、忍耐を要する修行方法が納得してもらえないということだと、気付きました。 有名な話があります。イチロー選手は高校時代、1日10分の素振りを365日1日も欠かさなかったそうです。日本人にはおそらく説明の必要もないと思います。生け花でも同じことだなと納得してもらえるでしょう。小さな努力でも、それを継続させることがいかに難しいか。そして、その莫大な効果。そう、莫大な! 繰り返しがマジックを生みます。 生け花なら、時に退屈で面倒な基本の練習を続けていくうちに、或る日突然、自分の生けた花が詩(あるいは生命)を持ち始めます。 そこへ至るためには1日も欠かさないという並外れた努力が必要なのです。 それにしても継続の難しさ! 試しに1週間だけでも毎日基本形を作ろうと目標を立てて取り組んでみて下さい。 たいてい4日目くらいにあれこれ面倒が生じて挫折してしまいます。 生け花に生きるという決意のない人は必ずそうなります。 継続するためには、強烈な覚悟と必死の努力が必要なのだと実感させられます。 それでも「継続は力なり」は多くの日本人共通の信念と言っていいでしょう。 ところが外国人にはこうした反復練習を嫌う人が実に多いのです。 「同じこと」「基本」「繰り返し」など退屈。 退屈すなわち苦痛!無意味!愚劣!最低!最悪! 求めるのは、常に何か新しいこと、常に何か違うこと。 この価値観の違いに気づくに至った幾つかの経験をあげます。 まず、このブログで基本の反復練習をさせた生徒のことを紹介しましたが、この生徒、結局辞めてしまいました。大成を期待していたのですが。私の力不足でもあります。 次に、最近、街を歩いていた時、”Nothing...

2019年11月25日

外国人に生け花を教える難しさ(3)

外国人にいけ花を教える難しさ、ということで再び考えてみます。 以前、考えたことは以下です。 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/09/blog-post_3.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/11/blog-post.html 最初に断っておきますが、外国人でも生け花がとても上手な方はいらっしゃいます。多くの日本人以上に。私などとてもかなわないなあという方も多いのです。 それは事実なので...

2019年11月8日

和:メルボルン生け花フェスティバル成功の秘訣(4)

メルボルン生け花フェスティバルについての雑感4回目です。前回分は以下です。 第1回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/blog-post_15.html 第2回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/2.html 第3回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html このフェスティバルの大きな特徴のひとつは、生け花展に外部からの出展者を募集したということ。 現状:メルボルンには生け花をやっている方が少ない。 理想:多くの出展者を迎え、この花展をフェスティバルと名のつくものにしたい。 現状と理想の間に大きなギャップがあります。 解決策は、メルボルンの他から出展者を迎えればいい! しかし、どうしたら州外、さらに海外、日本から出展者をお呼び出来るのか? これは難問です。 出展者にとっては旅費やら滞在費、かなりの出費になります。「観光旅行のついでに花展に参加してこよう」というような気軽さで参加していただいても、もちろんありがたいですが、やはりフェスティバル自体が海外からのお客様を呼べるほどに魅力的でなければいけないでしょう。 大きなスポンサーがあって、資金に余裕があれば、あれこれできるでしょう。 しかし、これは正真正銘の小予算イベント。 収入としては出展者各自から4000円ほどしか徴収していないのです。 (それとスポンサーの援助、匿名の寄付があり、とても助かりましたが) これで国際的文化イベントができるのか? できたのですね! 確かに小さい規模ではありましたが。日本から2名、ベトナムから1名、他州から2名の出展がありました。これは私たちにとっては奇跡的な(!)出来事でした。おかげさまで州政府の文部大臣代理、市会議員からも開会式にご来臨いただくことにもなりました。第1回目としては予想以上の成果です。 では、具体的にどんな戦略を用いたのか。 お金が使えないなら、頭を使い、体を使うしかないでしょう。 1、「メルボルン生け花フェスティバル」という名称:これがメルボルンで突出した生け花イベントというブランド効果を生んでいます。もちろん最大、最高の生け花イベントとはまだ言えないでしょうが、名前だけはとても立派。今後もっと注目を浴びることでしょう。日本からの出展者が履歴書に「メルボルン生け花フェスティバル出展」と書けるのです。その重要性が分かる方は、ブランドの重要性が分かっていらっしゃるはずです。 2、和生け花賞の実施:新人の生け花教師のキャリア・アップをお手伝いしたいということで、師範取得4年以内の方を対象とした賞を設けました。生け花の世界に競争原理を持ち込むことには相変わらず抵抗があるようです。説明には努めていますが、他人の考え方を変えことはできません。批判だけなら無視すればいいのですが、犯罪レベルの嫌がらせまで受けることにもなります。 ともかく、重要なのは、日本からの出展者に賞金とともに、「和・メルボルン生け花フェスティバル金賞受賞」と履歴書に書けるチャンスを提供したいということ。 作品が雑誌などにとり上げられる時、あるいは公共機関、民間の文化教室などに生け花教師として応募する時に、国際的な芸術コンクールでの受賞歴がどれほど大きな威力を発揮するか、いずれ実感していただけるでしょう。所属する流派外からの評価をいただいているということは、強力な武器になるものです。私自身、プロの芸術家ですからこの点はよく認識しています。 実際、初回の金賞受賞者は広島のYさんでしたが、「受賞までできて、本当にメルボルンに来た甲斐があった」とおっしゃっていました。 いつか、「和・メルボルン生け花フェスティバル金賞受賞」が、新人生け花教師の国際的な登竜門になるというようなことになったら楽しいでしょうね。 3、国際いけ花学会例会の共催:今回は私が研究発表を行っただけですが、出席者には花展出展だけではなく、それにプラスする経験が提供できたと思います。花道史については突っ込んだ質問もありました。 もちろん私の話を聞くために日本からやってくるという方はないでしょうが、出展のついでに聞いてみたら、多少ためになった、ということになれば十分。やがてはもっと重要な発表も行われるでしょう。国際的な研究者が登場するかもしれません。貴重な学習、意見交換の場にもなるでしょう。また、「メルボルンの国際学会で研究発表をした」という実績が必要な研究者もあるのです。そうした方々のニーズに応えるものになっていくでしょう。 花展出展+α の経験を提供する、独特の企画として継続したいものです。 4、生け花パフォーマンス:このイベントについてはいろいろな文脈から解説ができるでしょう。ここではマーケティングの観点から説明してみます。多少お金をかけてでも、この生け花フェスティバルに「特別イベント」を設けたいという希望はありました。強力な看板になるようなイベント。海外からの出展者にも興味を持ってもらえるほどの。 しかし、私たちの生徒や出展者に負担をお願いできませんから(当地の現実!)、このイベント開催費用は全額私の自腹です。このくらいのお金は使ってもいいかなという金額の上限。 この額では日本から著名な華道家をお呼びはできません。また日本で著名であっても、当地では日本文化や生け花に関心のある方々にしか訴求できません。また、高額の費用で招いたとしても、様々な制約があり、失礼ながらこちらの期待に見合った仕事(デモやワークショップ)をしていただけるのか、これも分かりません。私たちがあれこれ言える立場ではないのです。このようなことを考え、特別イベントとして日本から華道家をお呼びするというオプションは捨てました。 自分がやるしかない。失敗すれば自分のお金、評判とも失われる。成功すれば、経費のかなりの部分が回収できる、という危ないギリギリのところ。他人のお金ならこんな無責任なことはできません。しかし、こんな遊びをやってもいい歳になったかなと思って正当化しました。 世界的なミュージシャンとのコラボ、パフォーマンスを提供することに。私が選んだのは国際的に活躍するグリゴリヤン・ブラザース。クラシックに関心のある方々でしたら知らない人はないというくらいの実力派ミュージシャン。 会場はメルボルン・リサイタル・センターの一択。オーストラリアで最高のコンサート会場です。世界的な音楽家を招くにはここしかないでしょう。会場費用は高いのですが、彼らの膨大な会員数を持つメールや季刊プログラム雑誌で広報していただけるだけでなく、メルボルンの権威あるエイジ紙文化欄に毎週コンサートの広告が載るのです。この新聞紙上に「グリゴリヤン・ブラザース」というビッグネームと提供者「メルボルン生け花フェスティバル」が、同じ行に並んで掲載されることの意味は、お金に代えられないほど大きいものがあります。いわば、メルボルン最高の文化芸術の情報源で、国際的に著名なアーティストを広告塔にしてしまうようなもの。 実際、このイベントのおかげで人気のクラシックFMラジオからメルボルン生け花フェスティバルについてのインタビューを受けました。通常の生け花展がメディアに取り上げられるということは、実に少ないのが現実ですから、一つの成果かもしれません。 一流のコンサートへは出かける、しかし、生け花には関心がないという層があります。この層への訴求効果としては有効だったかと思います。結果は満席御礼。ヨーロッパ某国の領事夫妻もいらっしゃっていましたし、海外、州外からの出展者の多くの方からも楽しんでいただけたようです。 そこで、すぐに次年度の予約をとりました。協力に同意してくれたミュージシャンは、ポール・グラボウスキイ。ジェズピアノの巨匠。海外から私のショーを見に来るという方はあまりないでしょうが、ポールのコンサートならおそらく国内、海外からも観客が集まることでしょう。 5、キューレーターの活用:この展覧会が「国際的な文化イベント」であるため、プロを目指すキューレーターの卵にとっては格好の実践の機会になります。彼らは履歴書に書ける実績を熱心に求めています。今回は当地の芸術学部博士過程で学ぶ、そこそこ経験のある方をキューレーターに採用しました。比較的安価である上、出展者にとっても通常の生け花展とは一味違う、勉強の場になったと思います。さらに出展者はCVに、Curated...

2019年10月23日

和:メルボルン生け花フェスティバル成功の秘訣(3)

メルボルン生け花フェスティバルについての雑感3回目です。 前回分は以下です。 第1回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/blog-post_15.html 第2回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/2.html メルボルン生け花フェスティバルの目標は、一言で言って「生け花人口の拡大」。 もっと多くの人に生け花の魅力を伝えたい、ということ。 もちろんメルボルンでも従来からそのような努...

2019年10月17日

和:メルボルン生け花フェスティバル成功の秘訣(2)

メルボルン生け花フェスティバルについての雑感を続けます。 前回は以下です。 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/blog-post_15.html 運営委員たちと反省会をしたのですが、その内容がとても面白く、これは記事にして学術誌に投稿してみようということになりました。「大成功おめでとう」などと多数の方から言われて気分が舞い上がった時期を終えて、少し落ち着いた時点で話し合えたことも良かったのでしょう。 もしかすると、他の地域で生け花フェスティ...

2019年10月15日

和:メルボルン生け花フェスティバル成功の秘訣(1)

今年の8月31日、9月1日に開催した生け花フェスティバルについての雑感を書いていきます。 最近、ようやく2、3の生徒たちと小さな反省会をやる機会がありましたが、面白い意見が出るものです。近いうちにもう少し多くの方々と話し合いたいと思っています。 話の中心は、次回どうしたらもっと改善できるか?ということ。皆、自分が「主催者側の人間である」という見地から、意味のある反省点をたくさん出してくれました。 「お客様」「傍観者」という見地からは、また別な反省点、批判も出てくるのでしょうが。 ともかく、次回は、20...

2019年10月7日

日本人でよかった

美輪明宏さんが、テレビのインタビューで最近の若い日本人は素晴らしいじゃないですか、日本の未来は明るいですよ、と言っていたのにとても共感しました(私はテレビは見ないので、You Tube で見たのですが)。 美輪さんが、例えば、とあげた若者は、羽生結弦、内村航平、錦織圭等々。 精一杯頑張る、礼儀正しい、謙虚。 日本人の多くが大切にする価値観、品格を体現しているような人たちです。多くの日本人がとても誇りに思っているはずです。特にスポーツにおいては、日本人はフェアな戦いをします。きれいなのです。そこに我々は感動...

2019年9月28日

メルボルン生け花フェスティバルへのコメント

次回の和:メルボルン生け花フェスティバルは2020年9月19&20日開催予定です。間もなく出展者募集を開始します。 https://waikebana.blogspot.com/ Wa 2019 was a great success. Thank you all for your hard work. Shoso’s thank you message at the opening: https://www.shoso.com.au/2019/09/shosos-speech-at-opening-of-wa-2019.html Some...

2019年9月25日

分かり過ぎる時

分かり過ぎる!という読書経験が何度かあります。 大抵、数年間考え続けてきた問題に、すっぱりと答えてもらえたような時に 感じたものです。 例えば、学生の頃読んだコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」。 「アウトサイダー」が自分が考えてきた問題のキイワードだったのだ! その言葉を軸に考えればもやもやしたものが一気に整理できる! なんという名著! しかし、分かり過ぎると逆に少し不安にもなってきます。 本当に、その理解でいいのだろうか? そのような形で簡略に整理してしまっていいいのだろうか? もっと深く考えなく...

2019年9月11日

プラスチック生け花

プラスチックの造花で生け花を作ってくれというリクエスト。 造花なら、それは生け花ではないでしょう。 特定の文化圏の方からのリクエストです。 生け花とは・・・と説明するのもひとつですが、 とりあえずやってみよう、と。 造花のレベルが高いことにも感心。 1週間もたない商品ということでは 特定の文化圏では受け入れられないのでしょう。 高いお金は出してもらえません。 多少高くても、長期間もつものを、というのは理解できますが、生け花とは何か、また考え込んでしまいま...

2019年9月6日

生け花の本質、そして活け手の危険性

2019年度のメルボルン生け花フェスティバルが終了しました。 私のスタッフをはじめ本当に多くの方々が頑張って下さいました。 心よりお礼申し上げます。 フェスティバルについてはまた別の機会にまとめてみます。 今回は、個人的に気付いたことから。 パフォーマンスをはじめあれこれやったせいでしょうが、私の評判がとてもいいのです。 勘違いされそうな言い方ですね。つまり、私の実力以上にちやほやしてもらっているなあ、という感じがするのです。 確かに、生け花パフォーマンスなどあまり見たことがないという方が多いのでし...

2019年8月7日

メルボルン生け花フェスティバル Update 5

「専応口伝」の謎として考えたことを、エッセーにしたばかりですが、ついでにメルボルン生け花フェスティバル内で講義もしてしまおうということになりました。 日曜日の朝9時開始ですから聴衆はおそらくあまり多くはないでしょう。ただ、対象は花道史をあまり詳しく知らない方々も多く含まれるはずです。どうしたら有意義な話だったと思っていただけるか。花道史をもっと勉強してみたいと思っていただけたら、私は満足です。かなり大胆な仮説を提出することになります。 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/08/blog-post.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post_12.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/nature-in-ikebana.html 以下が最新のプログラムです。随分、生け花フェスティバルらしくなっているように思います。少ない予算でここまで出来れば将来のためにきっと役立つことでしょう。もしかすると別の地域の方が、参考にしたいから見にいってみようか、などということになるかもしれません。まあ、それはまだでしょうか。 メルボルンで生け花を学習したいという人がもっと出てくるようにしたい、ということで始まった企画ですが、そのような目標は個人ではなかなか達成できないものです。小さいパイを仲間内で取り合うのではなく、パイそのものを一挙に大きくしようという試みです。メルボルンでの問題は、生け花の認知度が低すぎるということです。生け花は実にマージナルな存在。一般の大多数の方からすると、ちょっと変わった人や傲慢な人が集まって何かやっているという程度の認識だと思います。 生け花の認知度を上げたいという、私たちの目標は、なかなか分かってもらえないのですが、細々と続けていければ少しづつ理解も得られるでしょうし、協賛者も成果も出てくるかなと思います。 協賛者がいないとか、無視されるとかならたいしたことではないのですが、卑怯な手段で妨害してくる人もいるのですね。これには手を焼いています。心貧しい不幸な人生を歩んでいるのでしょうが、生け花をやっている人でしょうから、もう少し幸せになって欲しいものです。この残念な敗残者についてはまたいつか話す機会があるかもしれません。あるいは、ないかもしれません。 Event...

2019年8月2日

「専応口伝」の謎 4

以下でお話ししたように、「専応口伝」の謎として考えたことをエッセーにまとめました。 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post_12.html https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/nature-in-ikebana.html さらに、これらを元にトークまでやることになりました。 「専応口伝」の生け花の本質論は、2つの側面を持っています。 その一つは広く了解されてきた。 ところが、他の一つはほとんど無視されてきた、というのが私の意見です。 この後者が、西洋文明の衝撃によって、再認識された。 それが1920年代の自由花の成立に関係しているのではないだろうか、ということです。 自由花というのは、わかったようでわからない。 いろいろな先生がいろいろな定義をされています。 本当のところはどうだったのでしょう? そんなところをお話しできれば思っています。 国際いけ花学会、秋季例会を以下の通り開催いたします。今回はメルボルン・いけ花・フェスティバルの一環としての開催です。是非、ご出席下さい。 会員以外の方の聴講も、歓迎します。 日時:2019年9月1日(日) 午前9時~10時 場所:Rosina...

2019年7月25日

「専応口伝」の謎 3 - Nature in Ikebana

多忙な日々が続き、情報や刺激をたくさん受け取りながら、内省するということがない時間が続くと、体験が深まっていかないという焦りを感じます。 そこで、先に「専応口伝」についてあれこれ考えたことをまとめてエッセーにしてみました。あっという間に6000字くらいの長さになってしまいました。論文とはとても言えない代物。一つの仮説として読んでいただけたら面白いかもしれません。国際いけ花学会編「いけ花文化研究」第6号に掲載されるのではないかと思います。 「専応口伝」の謎 1 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post.html 「専応口伝」の謎 2 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post_12.html いけ花における自然:存続可能性を超えて(1) 新保 逍滄* 要旨 いけ花史上、明治前から始まる西洋文化、殊にモダンアート運動の影響によってもたらされたいけ花における文化変容は、いけ花の本質に関わる問題を内包しているだけでなく、西洋文化における自然観と非西洋文化圏の自然観との相克、統合の可能性と不可能性という問題をも浮き彫りにすることができるであろう。西洋文化の生花への受容に意識的だった山根翠堂、重森三玲、勅使河原宏らを中心に、東洋思想の流れの中で彼らの取り組みを捉えてみたい。  西洋文化受容を契機としていけ花が表象するものが、象徴としての宇宙的秩序から、生命へと変化したという見解があるが、それら双方向への志向は「専応口伝」の中にすでに言及されているのである。従来の「専応口伝」解釈には不十分な部分があったのかもしれない。  いけ花が外的に何を表象するかという議論が中心であったものが、導入された西洋文化の衝撃によって、その内的な始源においていけ花を捉え直さざるをえなかったという事情があるのではないだろうか。そこにはいけ花の本質の探求だけではなく、日本的自然観の再検討も含まれていたであろう。 Abstract Western...

2019年7月12日

「専応口伝」の謎 2

「専応口伝」について、再び。 まず、前回書いたことは、訂正しなければいけません。 https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/07/blog-post.html 「この一流は野山水辺をのずからなる姿を居上にあらはし、花葉を飾り、よろしき面かげを本とし、先祖さし初めしより一道世に広まりて、都鄙のもて遊びとなれる也」 この部分ですが、 「この一流は」 (1)野山水辺をのずからなる姿を居上にあらはし (2)花葉を飾り、よろしき面かげを本とし 「先祖さし初めし」に続く。 と、通常の解釈に従う方が無難です。 なぜなら、「面かげ」という言葉ですが、その近くに面かげの対象、つまり名詞がないといけません。何の「面かげ」かがはっきりしなくなるからです。 その名詞とは、「花葉」ということになるでしょう。 ですから「花葉を飾り」と「よろしき面かげを本とし」とを離して考えない方がいいのです。 実は、上記(1)と(2)は同じことを繰り返しているのだと気付きました。 もちろん、意味は別です。 野山水辺...

2019年7月6日

「専応口伝」の謎 1

生け花について考えていると、「専応口伝」はどうしてもその作業の出発点になってきます。それについて書かれたものはたくさんあります。しかし、ほとんどの解説はあまりに薄っぺらです。特に、みなさんがブログなどで読むことのできる解説のほとんどは読む価値のないものが多いようです。 もしかすると私がこれから書こうとすることも、無意味なブログの解説のひとつ、ということになるかもしれませんが。 ともかく、「専応口伝」の謎について、です。 おそらく私の知る限り誰もまともに考えたことのない謎。 そして、花道の...

2019年6月27日

一日一華:当たり前

最近のある出来事。 自分では当たり前と思っていたことが、 実は、他の人からすると全く思いもつかない考え方だった、 ということだったのかな、と反省しているところです。 私は数十年生け花をやっています。 生け花の課題、問題点、可能性、そうしたことを考えるのは、 私にとっては当たり前のことです。 特に、生け花は全体としては衰退していると思います。 そこで、何か対応を考えようとするのは、私にとっては当たり前のこと。 どうしたらより多くのいけ花学習者を獲得できるのか? これから生け...

2019年6月22日

メルボルン生け花フェスティバル Update 4

2019年6月末:出展者申し込み締め切り 7月1日:デモ、アーティスト・トーク予約開始 8月31日&9月1日:和・メルボルン生け花フェスティバル開催 詳細は次まで。http://waikebana.blogspot.com 先日、クラスで生徒に協力をお願いしました。 これだけの国際的な生け花文化祭に一人$40で出展できるんだよ!と。 $40と言ったら、4000円弱でしょうか。 パスタ一皿くらいの値段でしょう。 日本だったら10倍はするよ。 これはすごいことなんだけど、実は私たちの会計は火の車なんだ、と。 ...

2019年6月13日

メルボルン生け花フェスティバル Update 3

メルボルン生け花フェスティバルとか、 メルボルン生け花月間、というような企画は必要かなと、長い間、思っていました。 メルボルンでは、生け花はまだマイナーな存在です。 「生け花って何?」という方も多い。 あと10倍くらいは生け花学習者が増えて当然と思います。 もっとピーアールしなければいけない。 その目的のためには、メルボルン生け花フェスティバルというのは 効果があるのではないか、と。 いろいろな方に協力をお願いしたのですが、なかなか成果が上がりません。 私の力不足、さらに、先立つ資本がない。...

2019年6月9日

メルボルン生け花フェスティバル Update 2

メルボルン生け花フェスティバルのおおよそのところが決まりました。 スタッフは皆準備に取り掛かっています。 しかし、まだ、どうなるのかわからないところがあります。 3ヶ月の準備期間に思いがけない、面白いことが起こるのではないか、 そんな予感があります。 美術修士号くらい持っているキューレーターを入れてみたい、 写真家の卵に写真を撮ってもらったら、出展者は喜ぶだろうなあ、 花の名前の付いた製品を作っている著名香水店に出店してもらえないか、 オープニングには当地のそれなりの方をお呼びできないか、 生け花をもっと面白い形で紹介するワークショップ、アートパフォーマンスを 手配できないか、 オープニングに著名な和太鼓奏者が「とび入りしましょうか」などと言ってくれている、 などなど。 今までの生け花展の多くは、トップダウンだったろうと思います。 上の方が様々な決定をし、メンバーがそれに従う、という。 私が私の生徒やスタッフに言っているのは、「メルボルン生け花フェスティバルはフレームワークなんだ。その中に入りそうなものがあったら、それを盛り上げてくれそうなことがあったらなんでも提案し、自分で企画しなさい」ということ。 さらに、「自分は実行委員長でありながら、二日間とも会場に顔を出せないんだよ」と。 随分ひどいものです。 生け花にはいろいろな面があるのです。展覧会だけで終わる必要はない。 もちろん面倒は増えます。 例えば、私のスタッフに小さなスケールで子供向けのワークショップをやったことがある生徒がいます。彼女に今回はIkebana...

2019年6月3日

メルボルン生け花フェスティバル Update

メルボルン生け花フェスティバルまで3ヶ月を切りました。 6月末まで日本からの出展者のお申し込みを受け付けています。 まだ、日本からの申込者は数名ですが、とても楽しみな方々です。 私たちのサイトでご紹介できればと思っています。 www.waikebana.blogspot.com 今回は私が1年限定で実行委員長を担当させていただきます。 いつも思うことですが、私の周りの方々はいい人が多い。 ですからとてもやりやすいのです。ありがたいことです。 きっといいフェスティバルになることでしょう。 考えてみると私は人との出会いに恵まれてきたなあとよく思います。 もちろん難しい人と出会ったことはあります。 尊敬していたのに、実は虚偽の人だったというようなこともありました。 必要以上に失望し、気持ちは落ち着きませんでした。 礼儀知らずなものですから相手がどれほど偉い方であってもためらうことなく声をかけていましたが、以来、慎重になりました。 また、Eric...

2019年6月2日

メルボルン生け花フェスティバル参加者募集中

メルボルンの花展に出展しませんか? 日本からの申込締切は6月末日です。 詳細は次からどうぞ。waikebana.blogspot.com 上記サイトでは出展者の紹介も行っています。 サイトへ行き、Label のExhibitor をクリックして下...

2019年4月30日

読書の愉しみ:生け花ーその可能性の中心

基本的に読書は好きです。 しかし、残念なことに愉しみのための読書はしばらくしていません。 今のところ、学術論文を書くための読書がほとんどですが、 その核になる書物から、少し離れた書物、 参考文献に加えられるかどうか、怪しいあたりの書物に、実は、とても面白いものが多いのです。 今、気になっているのは西洋モダニズムのいけばなへの影響。 「日本美術を見る眼」(高階秀爾)は、江戸末期以降、日本美術が西洋モダニズムを競って取り入れたあり様を教えてくれますが、おそらく同様の、新しいものへの激...

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