華道家 新保逍滄

2016年10月28日

2016年10月23日

21世紀的いけ花考 第51回


 現代芸術といけ花の比較論を試みています。両者の根本的な違いは何だろうと考えていたところ、それは俳句と小説の違いに似ていると思いついたのでした。「いけ花は俳句、現代芸術は小説」と考えると、それぞれの根本的な特徴がよく理解できるように思います。

 しかし、私の「いけ花・俳句試論」を始める前に、もう1点指摘しておきたいことがあります。西洋絵画史における花の位置付けです。それを確認しておくと、私の話がすっと理解できるようになるはずです。

 西洋絵画史において古来、静物画、殊に花の絵はステータスの低い分野でした。では、ステータスの高い分野とは何か?戦争の勝利や聖賢の業績を描いた歴史的絵画です。花の絵と歴史的な絵、両者がどのようにみなされていたか、ベンカード論文を参照し、簡単に説明します。 

 まず、歴史的絵画には物語があるのに対し、花の絵は綺麗なものを描写しているだけ。歴史的絵画を描くには、知識、直感、想像力など知的な能力が求められるのに、花の絵は何も考えなくても描けるじゃないか。前者は詩人、哲学者でないと描けないが、後者は技術があれば誰でも描ける。前者は作品鑑賞でまるで文学のように解釈や議論が生まれてくるのに、後者はただの描写。魂の問題もない。前者は高尚なハイカルチャー、要するに本物の芸術。後者は低俗、誰にでも受け入れられる、大衆的なローカルチャー、要するにただのクラフト(工作)という見方が一般的だったのです。19世紀後半の印象派の台頭までこうした状況だったようです。

 ここで考えて欲しいことは、花がステータスの低い題材とみなされていた、その理由。上記のように指摘されれば「そういう見方もあるか」と納得していただけるでしょうか。そして、気付いて欲しいより大事な点は、なぜ歴史的絵画が高尚とみなされていたかということ。つまり西洋芸術では何が尊重されるのかということ。実はこれ、西洋芸術の価値観。作品がただ綺麗なだけ、技術が凄いだけというよりも、作品の意味や知的なものを重視する態度があったのだ、ということを確認しておきたいのです。これで私のいけ花・俳句論への準備ができました。次回に続きます。

 今月紹介するのはFitzroy に開店した「ちょっと」に活けた作品。若いカップルが開いた精進料理カフェ。あちこちにレビューが載ったせいか、開店とともに満員御礼。完売閉店が続き、順調な滑り出しのようです。

 さて、10月8、9日には三流派合同いけ花展「和」が、アボッツフォード・コンベントで開催されます。メルボルンの小さな観光名所のひとつ。ぜひお越し下さい。

2016年10月15日

2016年10月9日

一日一華


十月九日、私たちの合同華展が無事終わりました。
とても盛況でしたから、成功と言っていいと思います。
生徒にとって有意義な経験だろうということで
参加しているわけですが、
私にとっても有意義な展覧会でした。

ただ、反省点もたくさんあります。
おそらくそれはかなり根深い文化的なものだろうと思います。
私の生徒は多くが協力的ではありますが、
まだ、運営のお手伝いという点では不足な部分が多いのです。
庶務において他流派の方々に依存しすぎているように思います。
何人かの生徒は華展開始直前に作品を持ち込み、
終了と同時に作品を運び去る。
後片付けもない。自分のテーブルさえ掃除しないという状況。

専業主婦や退職者というより仕事をしている方が多い、
忙しい生徒が多い、
まだまだ長年通っている生徒が少ない、
生徒にアジア系は少なく、ヨーロッパ系が多いというような
事情もあります。

日本で日本人を相手に、
お稽古事を教えるというのとは
おそらく、全く別の問題があるわけです。

一度、合同展ではなく単独で華展を開いて
いかに庶務が多いか、協力が必要か
体験学習してもらおうかと思っています。

2016年10月5日

一日一華:名画の前に


これほど素晴らしい名画の前に華を、というリクエスト。
苦労を察していただけるでしょうか。

グリーンゴッデス、緑の女神という商品名のカラー
を並べて立ててみました。

ある時から「忙しい」という言葉を
口にしないように心がけています。
おそらくそれは「忙しい、忙しい」とまるで念仏でも唱えるように
繰り返す人に出会ったことがあるからだと思います。
昨今、おそらく誰でも忙しいでしょう。
「忙しい」と口癖のように言っている人は
時間管理ができない人
仕事ができない人
他人のために自分の時間を使いたくない人
かもしれない。

この人はなかなかすごいなあと
尊敬できる人たちが何人かいます。
この人たちから「忙しい」という言葉を聞いたことがないのです。
私から見たら絶対忙しいはずなのに、です。
有能は人は「忙しい」なんて言わないのではないか。

とはいえ、「忙しいなあ」と
ぼやきたくなる今日この頃です。

Shoso Shimbo

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