華道家 新保逍滄

2022年2月9日

生花デモンストレーションの問題点


 YouTubeなどでも生花デモンストレーションを気軽に視聴できるようになり、ありがたいですね。ただ、ひとつ気がかりな点があります。海外で生花を教えている者からすると、私の生徒など、誤解しかねないな、と思う点があるのです。

それは、デモでは「制作の過程を見せてもらっている」と、単純に思い込むことです。実は、デモというのは、結果なのです。デモでは見せられない試行錯誤や瞑想の段階を踏まえて、その結果、作られたものです。99%、そうだと思います。

例えば、デモでは5分ほどで1作いけ上げる場合があります。しかし、実際は、その5分の過程を見せるために、作者は1時間、あるいはそれ以上、準備したり、変更したり、試行錯誤したりしているものです。それは当然です。

実は、この1時間の試行錯誤、瞑想こそ、本当の制作過程であり、教えなければいけない、見せなければいけないものなのです。

このままでは、生花とは「短時間で直感的に綺麗なものを作るものだ」「サクサクと作り上げていくものなのだ」などと思い込む人が出てくる可能性があるように思います。

その何が問題か、といえば、「生花は深く考えて、瞑想しつつ、作っていくものだ」という重要な点、生花の生命ともいえる点が見落とされる可能性があることです。

私が指導で、常に言っていることは「もっと考えなさい」、この一事です。君は考えていないね。せっかく授業料を払っても、何も考えずに作品を作り続けては、少しも進歩しないよ。立派な免状はもらえても、意味がない。生花という瞑想体験を知らずに、師範だ、マスターだなどと言うんじゃないよ、と。厳しく聞こえるかもしれませんが、誠意を持って教えようとすれば、やむを得ないでしょう。これは外国人に生花を教える難しさをあれこれ考えてきた私の、生花の現状に対する提言でもあります。

では、どうすればいいのか?

生花指導に新しい方法を採用することでしょう。
制作過程における瞑想の重要さを強調するような教え方に変えていくことです。

例えば、ひとつの作品を5分で仕上げるデモのようなものを教材とするのではなく(そんなものは腐る程ありますね。「5分で作る簡単生花」といった類のビデオとか)、実際、その作品を作るのに要した1時間以上もの試行錯誤、それを瞑想として、意味あるものとして、教えるということに方向転換しなければいけません。通常は、その試行錯誤を無駄なもの、見せたくないものとして編集して、削除してしまうのでしょうが。

そんなことに気づいて取り組んでいる方はあまりいないようなので、自分でやるしかないでしょう。生花道場ではそんな困難な試みを目指しています。

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Shoso Shimbo

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