華道家 新保逍滄

2019年2月21日

海外での生け花教室運営の秘訣


写真は制作途中の装飾生け花です。
私はこの段階あたりで十分かなと思いますが、これではクライアントさんは納得しませんね。
完成版は私のサイトに載せています。

さて、海外でどうしたら生け花教室はうまく運営できるのでしょう?
なかなか生徒が集まらないと、お悩みの方も多いのではないでしょうか?
私も明解な答えを持っているわけではありません。

ただ、生徒が集まらない、生け花の商業的な需要が少ないという問題点の原因は少しわかってきました。大きく2つ原因があると思います。

一つは、生け花の知名度が低い。名前は知っていても、長い期間をかけて習得する芸道であるとか、その結果、何が得られるのか、という部分まで理解が行き渡っていないのです。マーケットが小さすぎるということです。

この原因への対応は難しいです。おそらく個人で取り組むには大きすぎる問題かもしれません。かといって、何もしなければ現状が変わることもありません。

確かに、政府や大流派による生け花紹介活動などの支援で、ある程度、生け花への理解を広めることはできるかもしれません。しかし、私が提案したいのは、グループでの取り組みです。

グループで取り組めば、少しは効果があるかもしれません。私の試みは2つほどあって、一つはオンライン生け花コンクール。生け花ギャラリー賞というのを数年来やっています。そこそこの効果はあり、インターネットの可能性を実感しています。エジプトなど世界各地から、どこで生け花を学べるのか?という問い合わせもよくあります。ただ、この企画について、面白いのは、生け花に関わる方々からの嫌がらせが絶えないということです。残念な方々があるものです。

そして、もうひとつは、和:メルボルン生け花フェスティバルの開催です。数年来複数流派の合同花展にメンバーの一人として関わってきましたが、実行委員長の役が回ってきました。そこで、もっと門戸を開きたい、日本からも出展者を募集できないかということで動き始めることにしました。これはどうなるか未知数です。和については、このブログでもあれこれ書いていくことになるでしょう。

こうした試みは長い時間がかかるでしょうが、やがては私だけでなく私が育てた生け花教師、さらに他の先生方にも生徒が増えてくるということになるのではないかと期待しています。

さて、生け花人口が増えない、商業的な需要が少ないという問題の第二の原因ですが、はっきり言ってしまうと、教室が面白くないのではないでしょうか?お金を出して、ある程度の時間を過ごしたいと思わせる魅力が欠けているのでは?日本でなら、お稽古事であると、覚悟を持って生徒さんは教室にきてくれます。多少の我慢もしてくれます。しかし、海外では、ヨガ教室、音楽教室、スポーツクラブなどたくさんの余暇活動の一つとして、存立しなければいけません。楽しくなければ即生徒は離れていきます。

では、どうしたら、教室は楽しくなるのか?生徒が来てくれるのか?これは私も研究中です。いつか何か気づいたらまた、このトピックで書くことにします。

ただ、一つだけ気づいていることはあります。

私の教室はおそらくオーストラリアでも生徒数の多い方だろうと思いますし、生徒数も伸び続けています。その理由はおそらく教室の雰囲気がとてもいいからでしょう。生徒は楽しそうに制作していますし、笑い声もよく聞こえてきます。生徒間のつながりも育っていて、クラスの後で一緒にカフェに行ったり、私が長期の休みを取ると生徒が集まって自主的に勉強会をやるまでになっています。たまたま知的で上品、しかも熱心な生徒さんが集まってくれたという偶然のおかげなのかもしれません。

ただ、教室の雰囲気を大切にするため、私が気をつけていることもいくつかあるのです。一つは他人の悪口、陰口は言わないこと(時にこの方針を守れないこともあるのですが)。特に、他の生け花の先生、他の生け花流派について悪く言ったりするのは、教養のなさの表れです。教育のないのは仕方ないですが、教養のないのは自己責任。教養のない先生に生徒はつきません。

時に、何々先生がこんなイヤミを言っていた、などという話を伝えてくる生徒がありますが、私は無視。笑い飛ばします。そのような嫌がらせは古い文化の一側面かもしれません。これからの国際社会での生け花には全く不要のものです。海外で生け花人口を増やそうと考える人は、そうした悪弊は追放しなければなりません。生け花はもっと精神的にレベルの高いものだと示すべきではないでしょうか。

生け花を何のためにやるのか?自分のために、自分の流派のために、というようなことでは、欲心も競争心も起こりやすくなります。もう少し大きいもののために、と考えると、愚劣なものは吹き飛んでしまうのでしょうが。


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