華道家 新保逍滄

2015年6月28日

一日一華:庭の草花で


冬ですので、それほどたくさん花はありませんが、
庭からとった花材で小品を作ってみました。

まもなく生徒向けのいけ花コンクールの応募締切り。
それから私達選考委員の作品選抜作業がなかなか大変です。

http://ikebanaaustralia.blogspot.com.au
https://www.facebook.com/IkebanaGallery

もう少し応募が増えると
もっと面白いのに、と思います。

いけ花にコンクールを持ち込むということに疑問もあるでしょう。
国際的な生徒作品のコンクールとなると、
応募しようという生徒もあまり多くないかもしれない。
特に日本人にはそういう傾向があるかもしれない。

Facebookなどを見ていましても、
ご自分の作品は頻繁に公開している先生でも
ご自分の生徒の作品はほとんど紹介されないようです。
もっと生徒の作品が公開されてもいいのでは、と思います。

実は、生徒作品を公開すると、生徒はとても喜びます。
オーストラリア人、日本人ともに。
家族や友人に見せることができる、ということで。
そのなかから新しく生徒として
教室にやってくるということもあるわけです。

いろいろな事情はあるわけですが、
もう少し継続してみましょう。

2015年6月25日

一日一華:花菱レストランにて、そしてピロル菌について


花菱レストランでの仕事は
用意していただいた花材で生けます。
何が出てくるか分からない、
時間制限がある、という難しさ。
しかし、材料調達の時間が節約できるのは有り難いです。

私が忙しい時は、私の上級の生徒にお願いします。
皆、難しかった、でも面白かった、と言ってくれます。

ところで、最近、日本で人間ドックを受けました。
この日本のシステムは素晴らしい。
ビジネス化していて、サイト上で、比較、予約も簡単。

結果をオーストラリア人の医師に見てもらいました。
彼のコメントが面白かったので、紹介します。

バリウム検査について。
「こんなものは2度と受けないでくれ!」とのこと。
不正確だし、放射能を浴びるので健康に良くない。
30年前の検査だ、先進国じゃ廃止しているよとのこと。
別のもっと効果的な検査がある、というのです。

私の勘ですが、バリウム検査の施設はかなり高額でしょう。
それで古いと分かっていても、投資した医療機関は簡単に廃止出来ないのではないでしょうか?

粘膜不整、内視鏡の精密検査を受けるようにと出たので少々心配。
日本人は胃がんが多いので。
オーストラリア人医師のアドバイスは、「まずピロル菌検査をしよう」。

調べるとピロル菌は胃がんの原因になるとのこと。
子供の頃に体内に住み着き、中高年になるまではおとなしい。
しかし、それからは悪さをしだす。

1980年代、オーストラリアの研究者がつきとめ、治療法もできている。
中年以上の日本人はかなりの割合でピロル菌を持っているらしい。

風船を膨らませ、その呼気を調べるだけ。簡単な検査です。
結果は陽性。ピロル菌がいました。
さっそく治療に取りかかりました。といっても薬剤を飲むだけ。
5000円ほどしかかからない。

なんだか5000円で命拾いした気分です。
しかし、疑問は残ります。

なぜ、人間ドックにピロル菌検査を含めていないのか?
私のは基本的なコースでしたが。

人間ドックを受ける際には、
是非、ピロル菌検査を追加しましょう。

健康管理について私達はもう少し勉強しないといけないでしょうね。
医師に任せきりというのは問題かもしれない。


2015年6月18日

一日一華:ハラン再び



ハランで再び。
この作品の花材も生徒が置いていったもの。
余ったから、使えなかったから、
作品作って見せて、ということなのです。
宿題をもらったので、ちょっと遊んでみました。

私の生徒の作品を載せているサイトを
見ていただくとお分かりかと思いますが、
日本人の生徒が増えてきました。


どうして長い間、私に日本人の生徒がいなかったかというと、
たぶん、私が若かったからだと思うのです。
若い男が華道教師などといってもなんだか頼りない。
日本人はやはりある程度お年を召されたご婦人の先生を
選んで安心なのではないでしょうか。

ということは、つまり
私も年をとってきたということか。
それも悪くないでしょう。

日本人の生徒はやはり楽です。
教え易い。
外国人との違いはまたいつか
ちょくちょく書いていきましょう。






2015年6月15日

一日一華:ハラン


この花材、どう使っていいか分からないから置いていきます、
何か作ってみせて、
なんていうことで、生徒から宿題をもらうことがあります。
日本ではそんなことはあまりないのでしょうが。
海外ですから、なんでもあります。
でも、それも挑戦。
そこで、ハランとバーゲンディーの百合の取り合わせです。

日本でありえない、というか
華道家にとって、多分あまりないのは、
芸術作品制作の依頼でしょう。
華道家が何をやる人間か、おおよそ世間は分かっています。

しかし、ここはメルボルン。

華道家が何ができて、何ができないか、
あまりご存知でない方も多いわけです。

しかも私は彫刻を少し勉強しています。
そうするといろいろ面白い依頼があります。
今日は、三メートルの人の顔を作ってくれという依頼。
ある美術館がポートレート・コンクール展を予定。
豪州国内で最高峰の芸術賞のひとつです。
その広告に6週間かけて公開制作をというリクエスト。

とんでもない挑戦になりそうです。
楽しもうと思います。


2015年6月10日

一日一華:白樺の枝


我が家の白樺の枝で遊んでみました。

おそらくうまく書けそうもないことを書いてみましょうか。

メルボルンに移り住んで20年以上経ちました。
間もなく30年になるでしょう。

メルボルンでいけ花を習った先生は2人。
現在、草月流ビクトリア支部長のエリザベス・アンジェル、
そして、カーリン・パターソン。
両先生にお世話になりました。
特にカーリンの教室へは長く通いました。

先日、カーリンに用があって電話しました。
「ちょっと待ってくれ」と男性。
少し様子がおかしいのです。
「番号違いでしょうか」と私。
電話の相手が代わって、カーリンの娘さん。
「誰からも聞いてないのね」
「え?」
「母は去年9月に亡くなったのよ」
言葉が見つかりません。罪悪感。
急な病気だったとのこと。
「大変、失礼しました」半年以上も知らずにいたなんて。
「あなたのことは母からよく聞いていました」
私はカーリンがいかに優れた教師であったか、
今、メルボルンで活動している草月流の教師の
ほとんどがカーリンの生徒であること、
カーリンが教えてくれたことをまた
私達が次の世代に伝えていくだろうというようなことを伝えました。

電話を切った後、
昨年、カーリンから思いがけず電話があったことを思い出しました。
亡くなる直前だったのかもしれません。
しかし、いつもとなんら変わりない会話でした。
自分のことはほとんど話すことはなく、
私のことをあれこれ尋ねてくれました。
草月流ビクトリア支部についてあなたの考えを教えて、
というようなことを繰り返し言われました。
「何も気にすることはないですよ」「何も言うことはないですよ」
私も繰り返しました。
私は集団から距離をおいているだけ。悪感情はないのです。
しかし、集団はそんな個人にある種の感情を持つのかもしれない。
余計なことでご心配をおかけしていたようです。

カーリンについてはいつかきちんと書いておこうと思います。
いけ花の作家としての力だけでなく、
指導力という点で比類ない方でした。
実際、指導力のあるいけ花の先生には
なかなか巡り会えないのではないでしょうか。
私は幸運だったと思います。

2015年6月6日

2015年6月4日

21世紀的いけ花考(36)


 生花という言葉を巡ってあれこれ考えてきました。ここまでの話を簡単にまとめておきましょう。ここで言う生花とは、室町時代、主流の立花に対抗して出てきたひとつのスタイルの花飾りのこと。生花、立花、自由花など様々なスタイルをまとめていけばなと言う時には「いけ花」と表記して区別することにします。

 生花とは花に新しい生命を与えて蘇らせるという意味だろうということでした。つまり、生花に使う切花は生命を失った存在。それが生けるという行為を通過して再び生命を獲得するということ。生けるとはまるで宗教的な再生の儀式のようです。そのように考えてみるとまた新しい仮説が出てきます。

 前回は東洋哲学の見地からこの再生を無本質的な花としての再生だと説明したわけです。しかし、文化人類学的の基礎概念を当てはめてみることもできそうです。死→儀礼→再生。つまり通過儀礼ですね。結婚式、葬儀などと同じこと。これらの儀礼には共通する要素がたくさんあります。例えば結婚式で着る白無垢。これは死装束と同じ意味。人が生まれれば名前を与え、七五三でお参りする。それは故人に戒名を与え、年忌法要するのと対応しています。

 そうすると材料の切花といけ花になった花とは、全く違ったものだということが分かってきます。花を生けるということは葬儀を執り行うようなものなのです。そう言うと「暗ーい」なんてことになりそうですね。婚礼を執り行うようなものだと言ってもいいのですが、最近の婚礼はロマンチックなイメージが強く、旧来の自己が死に、新しく生誕するための儀礼という本来の意味がぼんやりしていますので、どうでしょうか。

 ともかく、いけ花のおおよその意味が分かっていただければ結構。次に、いけ花は芸術だろうか、ということを考えていきましょう。

 さて、今月紹介するのはメルボルンフラワーショーに出展したハート。単純な作品と見えるでしょう。私自身、企画段階で今年は楽だぞと思っていたのです。しかし、制作は大変。3日間でぎりぎり。今年は私の生徒も多数出展してくれました。作品集をYou Tubeで公開しています。私のサイトからご覧下さい。


 また、RMIT大学公開講座「いけ花から現代芸術へ」は7月から再開予定です。さらに、最近、Ikebana in English: Bibliographical Essay(International Journal of Ikebana Studies, Vol.2 )ほか3本のいけ花関連論文が出版されました。詳細は私のサイトでどうぞ。 

Shoso Shimbo

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