華道家 新保逍滄

2019年10月17日

和:メルボルン生け花フェスティバル成功の秘訣(2)


メルボルン生け花フェスティバルについての雑感を続けます。
前回は以下です。

運営委員たちと反省会をしたのですが、その内容がとても面白く、これは記事にして学術誌に投稿してみようということになりました。「大成功おめでとう」などと多数の方から言われて気分が舞い上がった時期を終えて、少し落ち着いた時点で話し合えたことも良かったのでしょう。
もしかすると、他の地域で生け花フェスティバルや類似のイベントを開催する際の参考になるかもしれません。また、海外での生け花事情を知る上でも面白いかもしれません。

しかし、前回も書きましたが、これは「主催者側」の反省点です。他の立場からは別の見方がありうるでしょう。

実は、主催者側の反省点の最大のものは、人手不足!

これは予想できたことです。前回までは展覧会中心でした。今回からはそれに加え、ワークショップ、トーク、デモ、子供向け生け花教室、賞、パフォーマンス、講義、キューレーターの導入、マーケットまで加わったのですから。さらに、市議会議員、州政府教育文化大臣代理、他州、海外からの出展者まで迎えることになりましたし。



展覧会からフェスティバルに。

この発展に伴い、準備と運営業務が膨大なものになりました。様々な障害に見舞われることにもなりました。どうしても行き届かないところが出てくるのです。
私たちの運営委員はとても優秀なチームで、「このチームで起業したら多分うまくいくだろうなあ」と、ささやかな実業家だった私が思ったりしたほど。
それでもさすがに3、4人だけでは細部まで対応できなかったようです。
「失敗も不手際も出てくるよ。それから学んでくれたらいいんだ。君たちが成長する機会にして欲しいんだ。失敗したって守ってあげるから」とは、初めから言っていたのです。

ともかく、来年は運営委員を約3倍の数の熱血集団にしないといけないでしょう。

今後の課題のひとつはそれだけの人が動いてくれるか、です。

運営母体は企業組織ではなく、複数流派が集まっただけのゆるい共同体。私たちの出展者、関係者全てが一丸となっている、とまではまだ言えないでしょう。
「展覧会だけで十分」「オタクがやりたくてやっているんでしょう?なんで忙しい思いをして利益にもならないことを手伝わなければいけないの?」と言う傍観者的な方もありえます。
小さな不満があればすぐ離れていくようなところもあります。
また、あそこがまずい、ここが不十分と批判ばかりの人もありえます(そんな難点の数々は承知しているので、どうしたら良くなるかを一緒に考えて欲しいもの)。
しかし、それは杞憂でした。来年の新体制ではもっと多くの方を執行グループに取り込んでいけるでしょう。

本気で取り組んだ人たちだけが味わえる充実感、成長の実感をより多くの方と共有できるはずです。今年、展覧会場の後片付けが済んで、会場のドアを閉めた時、私たち運営委員が薄暗い中で笑顔を見合わせ、感じた高揚感、です。
「やったね」と私。
「少しの間、面倒なこと考えないことにしませんか?」
「そうだね」
大きな大会で勝利したスポーツチームのようでした。

「今回、運営委員の仕事ぶりにはすごいものがあったように思うが、なぜこんなにやってくれたんだろう?それは大事な成功要因だと思うんだが」と反省会で私が尋ねると、すぐに「先生が私たちには使命があるって言ってくれたから」とか、「花の力でしょう」とか。

メルボルン生け花フェスティバルの使命。
それをきちんと共有していかないことには人は動いてくれないのでしょう。

さらにその使命が、例えば新保個人が儲かるようにとか、有名になるためにとか、ある流派(あるいは企業)の利益、発展のためとか、要するに小欲だけでは、ここまでの成功は達成できなかったはず。「これは天の助けか」(大げさですが)と思うほどの奇跡的な幸運な出来事が次々と起こらなかったはず。さらに、私たちのチームはここまで燃えなかったと思います。

ただ、小欲を否定はしませんでした。
それも目指そうよ。例えば、このフェスティバルの結果、君たちの仕事も生徒も増えるかもしれないよ!と。

でも、本当に目指すのは、もっと大きいものなんだ。
大欲を持とう、と私は説得に努めたのです。

私たちの大欲、目指したいもの。
それは生け花の今日的な課題でもあります。
(もちろん、それをユメだよと嗤う人も批判する人もあるのですが)

次回に続きます。

第3回:https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html

お知らせ:和メルボルン生け花フェスティバル参加要項は以下のリンクよりhttps://waikebana.blogspot.com/p/blog-page.html

Shoso Shimbo

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