華道家 新保逍滄

2018年11月26日

生徒への感謝と生け花への妄想


外国人の生徒に生け花を教えるのがいかに難しいか、
などということとをあれこれ書いてきたのですが、
実は、それは本当に小さなこと。
http://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/11/blog-post.html
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/09/blog-post_3.html

私の生徒はすごいなあと感心することが、ずっと多いのです。

もちろん、日本とは違いますから、例えば、制作協力を依頼しても、駆けつけてくれる人の数には限りがあります。その他、日本の華道教師が当然のこととして享受しているようなメリットは享受できないことが多いです。しかし、それも小さなこと。

なんといっても、熱心な生徒さんが多い。
しかも和気藹々とやっています。
これほど教師にとってやりやすいことはない。
とてもいい雰囲気で教室が運営できていますから、生徒が増え続けるばかりです。
ありがたいな、といつも感謝しています。

今月で、2018年度のレッスンも終了。来年2月まで約3ヶ月、休暇です。
昨晩、上級者向けに宿題のリストをメールしました。
3項目ほどあったのですが、その一つは、
生け花ギャラリーに投稿すること。
https://www.facebook.com/IkebanaGallery/

すると、該当者のほぼ全員がその日のうちに投稿。
なんという真面目な方々なのだ!

彼女らをどうサポートしていくか。
そんなことを今考えています。

海外での最大の問題はマーケットが小さすぎるということ!
生け花をいくら修得しても、それが収入源になるということは難しい。
生け花を学ぼう、生け花の装花を依頼しよう、などというニーズが少なすぎるのです。
これは現実的な難問。
私の生徒がいくら上手になっても、個人ではこの壁はなかなか超えられないでしょう。

解決策は、生け花の普及、定着。
これには大規模な戦略が必要です。
既存の組織などは成果をあげていないのですから。

今考えているのは、メルボルン・生け花・フェスティバルの開催。
メルボルンを海外における生け花の首都にしよう!などと豪語しています。

ここで、一つのパターンができたら、これを世界規模で拡大します。
例えば、シンガポール・生け花・フェスティバル
アムステルダム・生け花・フェスティバル
ニューヨーク・生け花・フェスティバルなどというのが世界中にできてくる。
これを一斉にやってみる。
国際生け花・デーなんていうのができるかもしれない。
生け花の認知度は一気に上がります。
生け花教師への需要もぐっと増える。
ここまでくると妄想ですが、そういうことを考える人も必要でしょう。

現在、地球環境が壊滅的なことになっています。
人類最大の危機が迫っています。

自然との関わりを再考しなければいけない時期にきています。
この人類的な課題に、一つの示唆を与える要素が生け花にあるのでは?と感じています。
自然=資源という近代資本主義社会の自然観を超えた自然観が、そこにはあります。

間もなくユネスコの学術誌に書いた私の論文が出版されるようです。
そこでも、そのような生け花の環境芸術としての可能性について書いています。

今こそ生け花をもっと普及させなければいけない、ということです。

2018年11月23日

生け花ギャラリー賞:生け花とコンクール


生け花とコンクールについては、いつか歴史的な見地からもきちんと書いてみたいなあと思っています。

今までも以下のようなことを考えてきました。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/09/blog-post.html
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/06/blog-post_21.html
http://ikebanaaustralia.blogspot.com/p/faq.html

生け花とコンクール(競争)はどうも相性が良くないのでしょうか。

私は現代芸術の方が主な活動領域です。ついでに生け花をやっているようなところがあります。現代芸術の方から生け花を見ると、おかしいなあというところがたくさん目に付きます。そのひとつが、コンクール、賞、競争に対する態度の違い。

もちろん現代芸術には賞もコンクールもたくさんあります。多くの人がそこへの入賞を目指していますが、また、落選したとか、希望がかなわなかったしても、それは芸術家にとっては当たり前のこと。誰でも失意は経験するもの、とサバサバしたものです。でないとやっていけないのです。ある意味で、競争(あるいは批評)に対してとても成熟した態度を持つ方が大半です。

ところが生け花ではどうもそういうことにはなっていません。生け花は芸術だと一方では主張する。そう主張している本人が、芸術にはつきものの競争(そして批評)を毛嫌いするというところがあります。歴史的にもそのような例があります。

もちろん、競争には長所も短所もあります。また、競争を否定することにも、長所、短所があります。それを踏まえて、競争のプラス面を楽しんでいいのではないでしょうか。競争を毛嫌いする人は、競争に対する態度が未熟なのではないか?未熟な競争心が強すぎるのではないか?それが私の仮説です。

私たちも生け花学習者向けのコンクール、生け花ギャラリー賞を運営していますから、毛嫌いされる、批判されるということが時にあります。さらに、卑劣な方法で攻撃してくる人まであります。情けないものです。対抗処置として署名運動を始めました。実のところ、趣旨は、生け花に卑劣さは無縁だと間接的に訴えたいのです。早く大人になって、一緒に楽しんだらいいではないか、それが無理なら、どうかお構いなく、と言いたいところです。ご協力お願いいたします。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/11/blog-post_19.html


2018年11月19日

フェースブックをより安全に、より賢明に


署名ご協力のお願い
フェースブックをより安全に、より賢明に!https://www.change.org/p/facebook-make-facebook-safer-wiser
 フェースブックは、オンライン上のいじめ、嫌がらせなどへの対策として、使用者が不愉快だ、嫌がらせだなどと感じた場合、フェースブックへ報告できるシステムを導入しました。報告されるとそのポストは直ちにフェースブックから削除されます。
 効果的である反面、悪用される可能性も否定できません。そのような迷惑を被ったものとして、事態の改善を求めたいと思います。
 私どもは2012年からオンライン上での国際生け花コンクール、生け花ギャラリー賞を主催しています。運営スタッフ、国際的な審査員共々、ボランティアにて生け花学習者のサポートになればということで続けています。
 2018年8月に本年度の受賞者をフェースブック上で発表しました。その報告は2万人ほどの方々に届いたのですが、間もなくファースブック上から削除されてしまいました。
 再度、ブログ上の結果 http://bit.ly/IkebanaAward18 を、フェースブックに送信しようとすると、次のようなエラーメッセージが出ます。
 警告:このメッセージは禁止された内容を含んでいます。フェースブックの他の方がアビューシブ(悪態、誹謗)だと報告しているからです。
 私たちのポストは、励ましと感謝の言葉ばかりが並んでいるのですが。 http://bit.ly/IkebanaAward18
 フェースブックに3度にわたって報告しましたが、事態は改善されていません。
 なお、同時期に生徒作品の写真も突然削除されました。こちらはフェースブックに報告後、回復しました。
 フェースブックに期待したいのは、以下の2点です。
1、2018年度の受賞者報告を回復してほしい、
2、フェースブックへの報告機能が悪用されないよう改善してほしい
 この署名活動は、生け花の世界で私たちが経験した出来事を、日本、世界各地で生け花に関わる多くの方々と共有したいために始めたものです。以下のリンクからぜひ署名にご協力下さい。

We understand that Facebook is working hard against online bulling, abuse or harassment. However, we would like Facebook to work harder in this regard. 
If someone does not like a post, she or he can report it to Facebook as offensive or abusive. Then, Facebook immediately removes such a post. That’s sound like a good system. But what happens if someone abuses the system to harass others anonymously? That’s exactly what happened to us. 
We have been running an international online ikebana flower competition since 2012. All of our administrative staff and internationally renowned judges are working hard as volunteers simply to encourage and support ikebana students around the world. 
We posted the result of the this year’s competition in August 2018. http://bit.ly/IkebanaAward18 The post reached about 20,000 people. But shortly after the announcement the post disappeared from our Facebook page, facebook.com/IkebanaGallery/.
When we try to post again, we get this message - “Warning: This Message Contains Blocked Content. Your message couldn't be sent because it includes content that other people on Facebook have reported as abusive”.
As you can see, our post is full of encouragements, good will and gratitude. http://bit.ly/IkebanaAward18
We have reported Facebook this case three times, but no improvement has been made.    
Around the same time, our photo albums of the students works were also deleted from our Facebook page. We reported it to Facebook and they came back shortly. 
We would like Facebook
1. to bring back our post announcing the results of the competition, and 
2. to put in more checks and balances so that the system will not be abused in this way in the future.   
We started this petition to let ikebana lovers in Japan and all other parts of the world know about this unfortunate case and encourage them to unite for a better ikebana world. 
We have asked the Headmasters of all major ikebana schools in Japan, Ikebana International and other ikebana related organisations to support this petition.    

2018年11月1日

外国人に生け花を教える難しさ(2)


外国人に生け花を教えるのは難しいという話の続きです。
前回の話は以下です。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/09/blog-post_3.html

今回は特に難しいと感じている生徒についてです。
つまり特殊なケーススタディ。外国人全般に当てはまるわけではないでしょう。

この生徒の作品は
ともかく強いだけ。
ともかく花がどっさりあるだけ。
そこにはポエトリイがないのです。

そこで、私の対策は、基本形の徹底復習。

基本形を選んだのは、この生徒の問題の核心が、
バランスのおかしさ、
間のおかしさ、
調和のなさ、といったことで、基本が身についていないということだったからです。

おそらくその方針は正しいと思います。
その方針が有効だった生徒も出ていますから。

10回位やってもらおうとしたのですが、とにかく抵抗します。
「今回は基本形の中でも、その応用形をやる」とか、
「今回は特別な花器を使う(基本形には不適)」とか。

とにかく一番単純な基本形!
皆が一番最初に習うシンプルな基本形を完璧に作ってくれと
言っているのですが、聞いてくれません。

これはなんだろう?

どうも、この生徒にとって基本形を今更やらされるというのはプライドに関わることであるようなのです。性格的に少し特別なところがあります。周りの人を圧倒し、すごい!と思われることに喜びを感じているようです。
さらに、この生徒は、基本形を美しいとは思っていないようでもあります。

基本形には生け花の美しさのすべてがあります。
そこを身につけないことには、まともな生け花が作れるわけはないのです。
実は基本形はとても難しいのだよと説明してもなかなか聞いてくれません。
この生徒にとっては自分が美しいと思うものしか作れません。
それはシンプルな美しさを持つ作品ではなく、
ともかくゴテゴテ、やたらうるさく、強いだけの作品なのです。
自分、自分、自分で溢れかえっています。

ふと思いました。これはお手上げだ、と。

生け花は人間修行だと言われます。
謙虚さのない人、傲慢な人には無理です。

生け花に求めるもの、つまり学ぶ動機が違うのです。
他からの賞賛や、自分の劣等感の補償を求めることだけが目的では、
生け花の本質には到達できないでしょう。

日本人が数世紀をかけて作ってきた美の基準、そこへ至る方法。
まずは、それに敬意を払うこと。
自我流の入り込む余地はないのです。
特に、初心者にとっては自己を滅却してお手本を真似しつつ
基本を身につけることが最優先。
無私の境地です。

先生の言葉に素直に従うことも大切です。
我が強すぎないほうがいいのです。
ここは日本人が得意とするところかもしれません。
しかし、そういう態度が身についていない人には難しいでしょう。

そうして基本形とともに、
基本的な生け花の原則を身につける。
そのあとで初めて、自由形を楽しんだらいいのです。

基本形などつまらん、自由形だけで行こうというのなら、生け花など習う必要はないのです。
教えるのが大変です。これが結論。

しかし、さらなる問題は、話がここで終わらないということ。

実は、上記のような自我流の生け花作品を作り続ける人が海外には少なからずいます。
面白いことに、それが評価されたり、
お金を払う人があったり、
時に何かの賞を取ったりします。

日本でなら自我流では評価されず、いずれ淘汰されてしまうでしょう。
しかし、周囲も生け花とは何かよくわかっていない状況ですと、
自我流生け花も淘汰されず、ああ、こんなものかと受け入れられるわけです。

しかし、それが悪いことでしょうか?

おそらく、通常の基準からすれば、生け花とは言えないでしょうが、本人は生け花だと主張します。日本の流派から師範やらなにやらの肩書きを手に入れたりもします。周りの方も評価します。

とすれば、放っておくしかないのではないでしょうか?
(たくさんの人に教える立場になって欲しくないなあとは、こっそり思いますが)

「こんなの生け花じゃない」などと言えば、喧嘩になるでしょうし。
(そういえば私もよくそんなことを言われますが)
他人が評価を得ているのに、ケチをつけるようなことは人間として恥ずかしいことでしょう。

また、時に、そうした方が、とても味のある作品を作ることも稀にあるのです。

海外における生け花の状況はなかなか面白いのです。

Shoso Shimbo

ページビューの合計

Copyright © Shoso Shimbo | Powered by Blogger

Design by Anders Noren | Blogger Theme by NewBloggerThemes.com