華道家 新保逍滄

2020年6月17日

生花道場カリキュラム



コロナの影響もあってオンラインで生け花指導ができないか、と考えはじめました。
すでに多く方が取り組んでおられますね。
あまり大きな期待も持たず、気楽に始めたのですが、これが大変なことに!
頭を絞りに絞る、大変な時間を食うプロジェクト、生花道場になりました。

おそらくもっと楽で、いい加減な方法もあったと思うのです。
あまり儲からないプロジェクトなのだから、と割り切れば。

Zoomをどう効果的に使うか?
私が関わっている他のプログラム、生け花ギャラリー賞和メルボルン生け花フェスティバルとどう関連付けるか?
タダで教材を公開し、どこで収益を出すか?
既存の多数の流派の指導とどのように競合を避けるか(小さいプロジェクトですからそんな心配は不要なのですが)?
カリキュラムがないと教育効果が上がらない。ではそれをどう作るか?他の方がやっているように基本型1、2、3などと作っていくか?
私個人が全て取り仕切るのはなく、できるだけ早く私のスタッフに主導権を渡したい。そのためにはどのようなシステムがいいのか?
ゲスト・ファシリテーターをお招きすれば謝礼も出したい。しかし、希望される謝礼の額はみな異なる。これにどう対処するか?
結局、このプロジェクトの目標は何なのだ?
さらに、つまるところ自分は生け花で何がしたいのか?

最後は自分の存在理由まで自問することになりました。
まったくあきれてしまいます。

まずは、この生花道場プロジェクトに関する自分の考えを書き出していったところ、一つの小論ができてしまいました。英文もほぼできあがっているので、こちらも間もなく発表します。

多くの方にご協力を依頼する以上、私の意図、プロジェクトの意義をきちんと説明するのが礼儀でしょうから、これは最初に必要なことだったのです。

参加して下さる方にも説明は必要でしょう。どうも通常の生け花コースとは違うようだが、何を考えて企画しているのだろう?お金を出して参加して大丈夫だろうか?などという疑問はきっとおありでしょう。

ある専門家の方にまず読んでいただいたところ、素晴らしいとお褒めいただき、気を良くしたのですが、同時に改定すべき点を多数指摘していただきました。本当にありがたいです。過激なところは可能な限り削ったのですが、まだまだ取扱注意を要する部分がありますね。学問の世界では批判は当たり前、血も涙もない厳しい世界ですが、生け花の世界ではどうもそのようにはなっていないようです。意図せず他人を傷つけたりすることがないか、気をつないといけないようです。

おひまなときにでもお読みいただければ幸いです。リンクは2つ用意しました。


短期公開講座におけるいけ花紹介案:デザイン理論と「専応口伝」

新保逍滄

要旨

現在、日本国外におけるいけ花人口は必ずしも増大しているとは言えないだろう。いけ花の国際的な浸透を妨げている可能性のある諸要因の中から、ここではいけ花の目的とその指導方法に注目してみたい。それらが受け入れ側のニーズに合っていないということはないであろうか。オーストラリアの大学における短期公開講座でいけ花紹介を導入する際に、問題となる現状、その対策として実践している事項を報告したい。いけ花の目的としては、環境問題の深刻化から従来とは別の側面、その環境芸術としての側面に注目してもいいのではないだろうか。また、指導カリキュラムについては、伝統的な指導方法の意義を認めつつも、外国人になじみのある視覚デザイン理論を用い、基礎レベルへの案内となるカリキュラムを提示してみたい。このカリキュラムの元となる理論は「専応口伝」の洞察に近似したものであることも示したい。


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