華道家 新保逍滄

2023年12月13日

花信2023:フォトブック出版

 Hanadayori 2023 が、フォトブックとしても出版されました。基本的に英語版ですが、全てのリクエストに日本語要約をつけています。Photobook - https://bit.ly/hanadayori23bookOnline Exhibition - https://bit.ly/Hanadayori23Perfumes - https://bit.ly/hana-perfumesWhat kind of ikebana are you eager to see? We're reaching...

2023年11月22日

生け花の終焉:外国人に生け花を教える難しさ(7)

 生け花を外国人に教えながら、どうしたらもっと上手になってもらえるのかな、とよく考え、悩んでいます。このブログでも何度も書いてきた通りです。おそらく海外で指導されている方なら、多くの方が日本人に教える時とは違う難しさがある、と感じておられるのではないでしょうか。そのため指導方法にも様々な工夫を凝らすことになります。一つの仮説として「無理なのではないか」と考えてはどうかとも思います。最近、ふと思い至ったことです。もちろん、外国人全員が無理という意味ではありません。少数の方ですが(とはいえ、日本人と比べ、遥かに多くの方々)、いくら続けても生け花の本質、つまり、花の生命感や作品の中の秩序性(調和)といったものが体現できない方があるのではないか、と思うのです。そのことを無視して、「努力すれば必ず生け花の詩性が表現できるようになるから頑張れ」と努力を強いるというのは、不毛ではないかと思います。それはまるで、ディスレキシア(失読症)の子供に、努力すれば読めるはずだと、努力を強要するようなものではないでしょうか。そのように考えると、生徒に対する態度も変えていくことになるでしょう。うまく作れないのは努力不足ということではないのではないか。楽しんで続けてもらえればいいのではないか、と余裕のある態度で指導に臨めます。それはそれでいいと思います。展覧会などでも、あの方はいつも突拍子もないもの作っているねと、評されるような方もご愛敬でいいのでしょう。海外のいけばな...

2023年11月21日

Hanadayori 2023 (Part 2) - Ikebana by Request - Online Exhibtion 花信:今、世...

ようやくオンライン華展、花信2023を公開できました。お楽しみただければ幸いです。以下は、ご協力いただいた方々へお礼状です。Dear Hanadayori Artist,We are delighted to announce the launch of Hanadayori 2023 Part 2. You can explore the captivating creations at [https://www.ikebanafestival.com/hanadayori-2023/hanadayori-2023-part-1-2-launched].We...

2023年10月26日

花道史の見方

 花道の歴史を見ていく時に、真を立てるか、傾けるか、つまり、立真か傾真か、を軸に考えていける、という意見があるようです。それもひとつかな、と。しかし、近代以前に限ることなく、現代までも含めた生け花の歴史を考えるならば、別の軸の方がより包括的ではないかと思います。日本には、守破離という便利な言葉があります。守、つまり型を守って行こう、あるいは洗練させて行こうという動きと、型を破って行こうという動き、守と破という軸で見ていってはどうかなと思います。例えば、投げ入れの登場は、立花という守に対して、破の立場であ...

2023年10月2日

2023年10月1日

テレビ出演

オーストラリア、ABCテレビのガーデニング・オーストラリアに、華道家、庭園デザイナーとして紹介されました。上の写真、あるいは次をクリックしてご覧ください。州外の友人たちや、美術修士時代の恩師2人から「おめでとう」とメッセージを頂いたのは嬉しいことでした。収録の日は病気からようやく回復しつつあった頃で、だるくて辛い時でした。朝8時から1日かかった収録が、わずか8分ほど。そんなものでしょう。https://www.shoso.com.au https://www.facebook.com/ikebanaau...

2023年9月24日

サイゴンで生花パフォーマンス

HANADAYORI NIGHT  Music & Ikebana Performance2023年9月にサイゴンで生け花パフォーマンスを行いました。和・メルボルン生け花フェスティバルのPR、そして、和・メルボルン生け花フェスティバルの主要スポンサーであるメタセンツの香水の新製品の発表会でもありました。この香水、HANADAYORIシリーズは、和・メルボルン生け花フェスティバルのひとつのプロジェクト、HANADAYORIにちなんだもの。HANADAYORIは、世界中から募集したリクエストに、世界各地の生花...

2023年9月20日

自由花の教え方

 このブログでは外国人に生け花を教えるのは難しいという話を何度もしてきました。しかし、そうした問題に拘って考えるという方はあまり多くはないのかもしれません。考えだすと大きな問題になってしまうので、面倒なのかもしれません。生け花が、その最も重要な部分が理解されずに海外に広まるということ。まるでフラワーアレンジの一種として受け入れられ、教えられているということ。「金になればいいんだよ。黙っていろ」というような方もあるでしょうが、日本文化が誤解され、その本質が理解されないまま広まっているということに、何か納得できないものを感じる、という方はないものでしょうか。海外における生け花の現状に不誠実なものを感じるという方はないものでしょうか。最近、ある生け花展に出かけました。出展者はほとんど外国人です。ひとにぎりの優れた作品があるのに、大部分の作品には何かが欠けているのです。何だろう?それは、生命感。生け花の生命です。どうしてこのような作品になるのだろう?ああ、もしかすると、自由花を学ぶ方法に問題があるのかもしれない、と思い至りました。自由花のお手本があり、そのお手本のデザインを真似しているのだろうけれど、お手本の本質は見落としているのではないか。その本質とは、生け花の生命、あるいは詩性。すると、自由花の教え方では、基本型を教える場合のように外に現われたデザインやスタイル中心で教えてはいけないのではないか。大部分の生け花コースは、自由花の指導においても安易な形態重視の指導を繰り返していますが、それでは生け花の本質は教えられないのではないか。西洋アレンジメントならそれでいいのかもしれませんが。形態に注目させるのではなく、もっと生け花の内的な機構に注目させるような教え方でないといけないのではないか。そんなことを考えて、生け花道場の指導方法ももっと吟味していこうと思ったのでした。以下のような広告文を英語で書いて、Googleで日本語に翻訳してみました。Application...

2023年9月15日

2023年5月23日

抽象的思考の面白さ:「学術論文の書き方」

 諸事情あって学術論文を読む機会がよくあります。学問の世界は広大ですが、私の専門とする領域は非常に狭いものです。教育心理学(博士号)、日本学(修士)、美術(修士)といった文系の中の小さな分野です。その狭い分野の経験しかない者の管見に過ぎないのですが、日本語の文系の論文にはつまらないものが多すぎるのではないでしょうか。 大学生の論文や博士論文だけでなく、先生方の論文でも、私に言わせれば、論文になっていないのではないか、というものに出くわすことがあります。仮にその論文を英訳しても、出版してくれる学術誌は見つからないかもしれません。もちろん、通常、そんなことを口に出すことはありません。ここだけの話です。もしかすると私が受けた学問の訓練(修士以上)がオーストラリアの大学においてですので、日本の学術の特殊な事情に不明であるというようなことがあるのかもしれませんが。立派なタイトルの立派な本でありながら、実につまらない、というものもあります。最近、つまらない論文の共通項が分かってきました。一言で言えば、抽象的思考がゆるい。事実の羅列で終わっているようなもの。最悪です。考察がないのでつまらない。事実の集積、あるいは調査の結果を分析し、グループ分けし、比較し、パターンを見つけ、理論をすくい上げると言った分析や抽象的思考の面白さがない。それをリサーチ・メソドロジー(研究方法)と言いますが、メソドロジーの習得は論文を書く前提です。あるいは、ある事実(または調査の結果)を分析する段階に、分析ツール(理論)を持ち合わせていないために、思考が支離滅裂になっていたりします。文芸評論めいた著作によくあるケースです。最近、必要があって香りについてのエッセーを読みました。デザインという言葉の定義を検討しつつ、特定の事象を説明しようとしているものです。私にとっては役に立つ内容でしたが、もう一つ上位の抽象概念(例えばアサンブラージュなど)を持ち出して、デザインを定義し直し、まとめるというところまでいかないと、説得力のある面白い論文にはなりません。Googleで調べると、「論文の書き方」ということで、たくさんのアドバイスが見つかります。よく見かけるのは論文の構成から説明していくもの。序論文献レビュー方法調査結果分析考察結論などが一般的な構成パターンでしょうか。ここで最重要なのは「文献レビュー」です。【必読!】文系学生のための卒論・修論の書き方https://www.zakki-weblog.com/entry/dissertation-writingというサイトによると、文献レビューとは、以下のように説明されています。「関連する過去の文献や論文、理論を、その分野の学術的流れや歴史なども含めて要約し、批判的に検討する。用語の定義などもここで。」「その分野の学術的流れや歴史」というところが大切です。ここを踏まえていなければ、論文は存在する意味がありません。修士論文や博士論文でも、ここがないに等しいというものがありますが、その重要性を十分指導していないなら指導教官の責任は重大です。実は、「なぜ学術的な流れや歴史が重要なのか」という質問をしてくる方を、納得させるのはかなり難しい仕事になるでしょう。それがないと、一部の人々だけで共有される独りよがりなレポートになってしまうからです、と言っても分からない方には分かってもらえないでしょう。ここで他の人の論文を持ち出して批判や評価をしたりするのはかばかられますので、昨年出版された私の小論文を参考に説明を続けます。今までのところ私の出版物はほとんどが英文なので、私にとっては数少ない日本語で書いた論文のひとつです。2022....

2023年3月30日

香水「花信コレクション」予約受付開始

 花信 Hanadayoi - Ikebana by Request は6月に発表予定。これを記念して、新しい香水コレクション Hanadayori が発売されます。ただいま、先行予約受付中です。香水売り上げの一部はメルボルン・生け花フェスティバルの運営費用に当られま...

2023年3月17日

2023年3月6日

『専応口伝』における「面かげ」の形而上学(英語版)

先に紹介した論文の英語版は以下です。AbstractSenno Kuden (16th century) historically presents the most influential definition of ikebana, which includes both ontological and epistemological concerns in representation. Although the former contributed to the development of the common...

2023年3月3日

上品さという常識の言語化を

 生け花を嗜むということは、特定の流派に属するという以前に、日本文化に関わるということです。日本文化を学ぶ場合、それは同時に上品さを身につけていくことでもあるでしょう。これはあまりに自明で、基本でもあるため、わざわざ言うまでもないこと、ではないでしょうか。生け花をやっている下品な方というのは通常あり得ないわけです。私などでも公の前で生け花のデモをやるとなれば、言葉遣いはもちろん、服装にも気をつけます。不潔ないでたちで花をいける花道家など見たことがないでしょう。セクシーな衣装で花をいける、などというのはありそうですが、これも実際には見たことはないですね。たとえあったとしても、「まあ、冗談だろう」ということになります。それは、日本人にとってはあまりに自明すぎて、わざわざ口にする必要もないというレベルの常識です。おそらく日本の伝統文化の根本では、精神的に高貴で洗練された方(あるいは天皇陛下かもしれませんが)とのつながりを想定してきたということと関係があるのかもしれません。では、この上品さへの志向を外国人に理解してもらっているでしょうか?上品さをどう英訳したらいいのかな、と考えていたとき、偶然見つけた言葉があります。Be...

2023年2月24日

我慢・我慢

 海外で生け花の先生方と接していると、ここは我慢だな、と感じることが時にあります。きっともうすぐ状況は変わってくる、と思ってはいますが。先生方への要望はあります。しかし、非難でも、愚痴でも、嘲弄でもなく、「もう少し勉強なさいませんか」という要望を伝えるのはなかなか難しいものです。例えば、大変親切な生け花の先生がいらっしゃいます。私のためにわざわざ時間を割いて、お話して下さいます。「いいかい、生け花というのはね、云々」「天地人と言って、宇宙を表すものでね・・・」そこで、私が「それは、歴史的には、象徴的表現を説明的表現と勘違いしたもので」と口を挟むや、「そこは大事じゃない」と私を制し、ご自分の御高説を滔々と話し続けられるわけです。失礼ながらこの方はいけばなに関する英文書籍を2、3冊は読んでおられると思います。一般向けのガイドブックのようなものが出ています。しかし、それで生け花の大家のようにお話をなさるには、相手があまり良くない。「これを読んで勉強しなさい」とご自分の書かれた2ページほどの生け花論を手渡して下さいました。もちろん、私は礼儀正しいですから、黙って聞いて、お礼申し上げましたが(それでなくても傲慢な奴と思われかねない)、いろいろ考えていました。・ 早く終わらないかな?(失礼)・ 私の論文、ひとつでいいから読んで欲しいな。まずは、"Ikebana...

2023年2月23日

『専応口伝』における「面かげ」の形而上学

 新しいエッセーが出版されました。よろしければリンク先からダウンロードして目を通していただければ幸いです。今回は日本語版と英語版両方が出版される予定ですが、以下のリンクは日本語版です。新保逍滄(2023)『専応口伝』における「面かげ」の形而上学、International Journal of Ikebana Studies,10, 21-28.https://doi.org/10.57290/ikebana.10.0_21『専応口伝』についてはこのブログでも何度も書いています。そこにはどうも謎の部分が...

2023年2月19日

いけばな療法学会にて

2023年2月19日、いけばな療法学会にていけ花普及への取り組みについてお話しさせていただきました。主にメルボルンいけばなフェスティバルについて紹介させていただきました。同フェステイバルについては、このブログでも何度か取り上げていますのでご参照ください。使用したキーノートを以下に掲載し...

2023年2月11日

花信:Hanadayori 23 ー 出展者リスト

 オンライン華展、花信の出展者とリクエストが発表されました。https://www.ikebanafestival.com/hanadayori-2023/hanadayori-2023-update「花信:今、世界が求める花がここに」とあるとおり世界中から様々なリクエストが集まりました。個人的な記念の花のリクエストはもちろん、華道家にもっと挑戦してほしいという趣旨のリクエストが多かったように思います。なかには生け花についてあまりご存知ないのかなと思われるような方からのリクエストもあり、これはこれで面白...

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