海外で生け花の先生方と接していると、ここは我慢だな、と感じることが時にあります。きっともうすぐ状況は変わってくる、と思ってはいますが。
先生方への要望はあります。
しかし、非難でも、愚痴でも、嘲弄でもなく、「もう少し勉強なさいませんか」という要望を伝えるのはなかなか難しいものです。
例えば、大変親切な生け花の先生がいらっしゃいます。
私のためにわざわざ時間を割いて、お話して下さいます。
「いいかい、生け花というのはね、云々」
「天地人と言って、宇宙を表すものでね・・・」
そこで、私が「それは、歴史的には、象徴的表現を説明的表現と勘違いしたもので」と口を挟むや、「そこは大事じゃない」と私を制し、ご自分の御高説を滔々と話し続けられるわけです。
失礼ながらこの方はいけばなに関する英文書籍を2、3冊は読んでおられると思います。一般向けのガイドブックのようなものが出ています。
しかし、それで生け花の大家のようにお話をなさるには、相手があまり良くない。
「これを読んで勉強しなさい」とご自分の書かれた2ページほどの生け花論を手渡して下さいました。
もちろん、私は礼儀正しいですから、黙って聞いて、お礼申し上げましたが(それでなくても傲慢な奴と思われかねない)、いろいろ考えていました。
・ 早く終わらないかな?(失礼)
・
国際いけ花学会の例会に参加されれば、もう少し深い知識が得られるのにな、とか。
ただ、数十年前と比べ、現在、格段に情報量も増え、情報へのアクセスもしやすくなっています。生け花に対する一般の人たちの理解も深まっています。間もなくもう少し努力し、勉強しないと先生としてやっていくのが困難という事態になるはずです。生け花の世界では通常の教職と異なり、専門知識が少なくとも技術さえあれば教授とか立派なタイトルをいただけるようになっているようですが、そのメッキがすぐに剥がれるということになるでしょう。
例えば、昨年、ある新聞に私のことが取り上げられました。
短いインタビューでしたので、あまり期待していなかったのですが、なんとも
深い記事に仕上げていただきました。専門外の方でも生け花に対し、これほどの深い理解を示しておられるのです。
ですから、あともう少しの我慢だなと思っています。
内容は生け花教師どなたにとっても(流派に関わらず)とても価値のある内容になるはずです。ご自宅で聴講でき、しかも無料です。
ぜひご活用下さい。
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