バララット美術館からの制作依頼。
待望の仕事です。
アーチボールド賞展。
豪州で最も人気の展覧会のひとつ。
数十万人の動員があります。
その展覧会の広告塔を制作してくれ、
肖像画展にちなんで巨大な人物の頭を制作してくれ、
というリクエスト。
華道家は彫像などやらないでしょう。
守備範囲が違います、と断ってもよかったのです。
やれるかどうか、分からないのですから。
しかし、断っても、
また、承諾して、失敗しても
新参の彫刻家としての私のキャリアは終わりです。
あとがありません。
著名アーティストとは立場が違います。
彫刻家の看板を下げ、華道家としてやっていく、
それもいいかもしれません。
迷っていたとき、実はある人物のことが思い当たりました。
詳しくは知らないのですが、渡辺謙という俳優。
同郷出身というだけで少し親しみを感じます。
同じ雪に吹かれて育ったのかもしれない。
ミュージカルでトニー賞を取ったとか?
詳しくは知りません。
ただ、俳優とミュージカルのシンガーとでは
全く別の世界です。
特にブロードウェイとなれば
音楽のレベルが桁違い、
英語のレベルが桁違い、
それを乗り越えて高い評価を勝ち取るというのは
相当な努力、執念があったはずです。
日本国内の評価で満足しているのと
国際レベルで勝負するのとでは話が違います。
それを思うとなぜこの程度の壁が超えられないのか?
トニー賞と比べたら、実に小さい試練!
海外で勝負する覚悟で日本を出ているわけです。
一か八かやってやったらいい、
と覚悟ができた次第。