「いけ花は芸術か?」という話です。まずは、近現代の芸術、いけ花、それぞれの歴史をざっと抑えておかないとまとまった話になりません。要は20世紀における芸術の流れと、いけ花の流れ、この両者はどこでどのように交錯したのか?いけ花のほうは比較的分かり易い。しかし、芸術のほうは波乱の1世紀でした。
数年前、ロンドンのTate美術館でアーティスト・タイムラインという20世紀芸術史の簡略な年表を見つけ、「これが欲しかったんだ」と喜んで買ったものです。一枚の紙に後期印象派からヤング・ブリティシュ・アーティスツあたりまでの主要な芸術運動が主要作家の名前とともに記してあります。しかし、実はこんなものをにらんでいてもさっぱり核心的な部分が分かりません。様々な運動が次々に現れては消えていく。まるでファッションの流行のようです。短いスカートが流行ったり、黒色が流行ったり。もっと深い、芸術の変動の要因のようなものがあるはずなのです。
書いてあることで納得するというのは高校生まで。大学以降は自分の腹で納得しない限り、知的探求を止めてはいけません。自分で納得したことだけが表現する意味があるのだと思います。20世紀芸術の混沌、これは何だ?とあれこれ考えていきました。現代芸術に関する日本語の本も読んでみましたが、なんとも分かりにくい。大学院で訓練を受けた私でも分からない。頭の悪さを隠すためにこんな大業な文章を書いているのだ、というのが私の結論。
おそらく私と同じような意見が多かったのでしょう。最近、分かり易い現代芸術の入門書が多数出版されています。私が特に気に入ったのはオックスフォードから出た T. Barrett 著 Why is That Art? 現代芸術講座のテキストとして多数の芸大で採用されているとのこと。次回はこの本を参考に現代芸術の流れを簡単にまとめてみましょう。
今月紹介するのは小品。材料をバランスよく組み合わせただけ。ある程度いけ花をやれば容易に作れるレベルでしょうが、作っている過程は瞑想とも言える楽しい時間。この作品を来年度の無料カレンダーに使うことにしました。なお、リビング・ナウ誌でも連載が始まっています。また、いけ花学習者の国際コンクール、いけ花ギャラリー賞も間もなく受賞者発表。詳細は私のサイトからどうぞ。