華道家 新保逍滄

2018年6月8日

フェイク・マスターズ


海外の生け花の世界には独特のものがあります。
そのうちの一つは、私が勝手にフェイク・マスターズと呼んでいる方々の存在。
フェイクですから、偽物。
ちょっと失礼ですから明言、公言はしません。
(ブログに書いたら、公言ですかね。読者は少ないでしょうが)


マスターというからには、生け花で言えば家元とか、師範とか
いろいろな言い方がありますが、要するに大家、達人ですね。
その真似をしている人が多いのです。
その方々の言動には、なかなか面白いものがあります。

私はそのモデルはどこにあるのだろうとずっと考えていますが、思い当たりません。
多分、空手の映画とか、どこかそのあたりにあるのだろうなあと思います。
どこか悟り切った風格があり、黙っていても人々は尊敬してくるのが当然、と言うところがあります。

しかし、悲しいかな。フェイクなのです。
まず、実力が伴わない。
道を修めようというものの真剣さがない。
そして傲慢なのです。

日本では家元とか名人とされる人々に会ったことがあるという方も多いでしょう。
おそらくその謙虚さ、フレンドリーさ、ユーモアのセンスに驚くという印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。
一言で言えば、「爽やか」です(達人の持つ爽やかさについては、また別に考えます)。
少なくとも、私が出会った、数名の方々に関してはそうでした。傲慢な方など一人もいません。

ところが、海外にはいるんですね。
ちょっと滑稽な大師範が。
おそらく、学歴とか社会的なステータスとかといった点であまり高い自己評価を得られなかった方が、生け花を少しかじって、突然、偉くなったような気分になるのではないでしょうか(どうしてそういうことになるかというと、それは日本文化が海外において特別な存在だから。ここは面白い点ですからいつかもっと詳しくお話ししましょう)。

そういう方々も生け花の流派にとっては有用でしょうから、特にあれこれ言うつもりはありません。役職を与え、きちんと仕事をこなしてくれればいいわけでしょう。

有害になるのは、彼らが他の人をコントロールしようとしだす時。
時に、生け花のテクニック以上にいじめのテクニックに秀でているなどということになると周囲は迷惑です。

おそらく、戦後、海外で生け花を指導する日本人も多かったはずです。その大部分は女性だったでしょう。英語力その他様々な制約があり、「おかしいな」と思うことがあっても、なかなかはっきりものを言う方は少なかったのではないでしょうか。日本人としての、花道家としてのたしなみもあるはずです。昨今、世界を見渡しても、無礼で遠慮のないのは私くらいでしょう。

最近、私が英文で短い注意書きを書いたところ、思いがけないほどの反響がありました。
http://www.shoso.com.au/2018/06/ikebana-competition.html
海外における怪しいマスターの特徴として、
生け花を神秘化する
いつも腹を立てていて、他人を中傷する
実力主義のコンクールを嫌う
などと言う点を、冗談半分で書いたのです。

こういった権威的な方々のために、苦労している方が多いのではないでしょうか。
モヤモヤがスッキリしたというようなコメントもありました。

だからと言って、こういう方々に対抗しようとか、成敗しようとか
そんな苦労をするつもりはありません。
今以上に敵を作る必要はないのです。

ただ、私にできることは、そういうマスターは真物じゃないかもしれないよ、と諭すだけ。それで十分ではないかと思います。

そして、当然のことですが、私自身、マスターなどと自称しないようにと心がけています。ところが、様々な機会に紹介される際、生け花マスターと言われるのです。宣伝ですから仕方ないのですが、その度に訂正しています。

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