華道家 新保逍滄

2016年6月5日

21世紀的いけ花考 47


 いけ花と芸術についてあれこれ書いてきました。そろそろまとめです。私にとって両者が問題になるのは、歴史上、少なくとも2つの時点において。ひとつは1920年代、自由花が登場してから、戦後、自由花を重視した草月流等の爆発的な発展まで。西洋芸術がいけ花の変容に強力に関わっています。いけ花は日本の伝統芸術という見方が一般的でしょうが、実は西洋芸術の影響なくして今日のいけ花はありえません。
 
 ただ、芸術という言葉はとても皮相的な理解で用いられていたように思います。広告のコピーのような扱いだったのではないでしょうか。ただ、それが一要因となって、一人で始まった流派が二、三十年で会員数、数十万の大組織に発展したわけですから、特異な社会現象でもあります。文化変容の問題として、あるいは社会学の問題としてどなたかにきちんと研究してほしい問題です。私が理事を務める国際いけ花学会の学術誌、International Journal of Ikebana Studiesに投稿していただければ喜んで査読します。

 そしてもうひとつは、現在、私自身の問題として。華道家と彫刻家、二足のわらじを履く者としていけ花と芸術の関係はどうなっているのか、と考え続けています。私なりに現代芸術の特徴を簡単に紹介してきました。難しい話を難しく話すのは誰でもできます。簡単に話す方がずっと知恵が必要です。もちろん、もっと深く書いてくれというご要望もあるかもしれませんが、それは自分でお金を出して勉強すべきこと。その現代芸術の文脈にいけ花をどのように乗せるか?と考えると、一つのヒントとして、またも村上隆のことが思い当たります。彼の作品は日本のアニメを現代芸術の文脈に乗せた一例と見ることもできるからです。芸術とは無縁のように見えるアニメさえ現代芸術にできるわけです。では、どうしたらいけ花を現代芸術にすることができるのか?これも簡単に答を期待してはいけない問題でしょう。

 今月紹介するのはビクトリア州政府の依頼で制作したテーブル装花。日本人の来賓のためにということでご指名いただきました。名匠花島さんに緊急に竹花器を15個作っていただき、花留めにはオアシスを使っています。

 さて、5月6日にはいけ花パフォーマンス、5月22日には国際交流基金の依頼でスノー・トラベル・エキスポに大作を出展しました。機会があれば近くご紹介します。

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