私の故郷は新潟県の村松町。といっても、今は五泉市と合併し、村松町は無くなりました。過疎化の進む小さな田舎町ですが、ここで30年ほど続いている村松萬葉という文集があります。
初めてその存在を知ったのは「村松マンバになんか書けや」と、今は亡き父親に言われたのが、きっかけ。メルボルンまで持参してくれたのでした。
村松マンバって何者だろうと思ったものです。
上質の装丁の本を手にとって読んでみると、その面白さに驚きました。寄稿者は村松町と関わりのある100人ほどの方々。面識のある方はほとんどありません。しかし、様々な人生に触れることの面白さ。特にご高齢の方々の体験談、戦争体験談などはとても貴重なものに思えました。これは文化遺産だなと感心しましたので、私も毎年寄稿して10年ほどになります。
しかし、どうしてこのような文集が存続できるのか?と思うと、やはり編集に携わっておられる方々の並々ならぬご苦労があるのでしょう。熱意なくしてこれだけの実績は作れません。
機会がありましたら、多くの方に読んでいただきたいと思います。おそらく入手の難しい本だとは思うのですが、公共の図書館などでは閲覧できるでしょう。
そして、もし村松と所縁のある方が私のこの雑文を目にされることがありましたら、寄稿をお勧めします。長さは原稿用紙4枚、投稿料1万円だと思います。連絡先が不明の場合は私宛、メールを下されば、お知らせします。shososhimbo@gmail.com
以下は数年前、村松萬葉に寄稿した拙文です。
精神の大海へ:叔父サンの言あるいは大言壮語
今年の正月に帰省した。ほんの数年会わないうちに甥も姪も皆素晴らしい子供に成長していた。こんな学生が育つなら日本も捨てたものじゃない。いや、たいしたものだ。さて、君達よ、これからの数年がとても大切な、そして難しい時期だ。私が君達の年齢だった頃はどうにもならない代物だったことを思えば、これほど健全な君達だ。心配ないだろうけれど、お節介な叔父にちょっとアドバイスさせてほしい。
まず、テレビはできるだけ見ないこと。日本のテレビの大部分は低脳向け。特に民放。お笑いといってもほとんどがいじめ。女性蔑視、拝金主義、あのような価値観に染まると白痴になる。消費にしか人生の喜びを見つけられないような不幸なことになってしまう。あれほど愚劣な番組を垂れ流している国は世界に日本しかない。一緒に帰省した家内も驚いていた。
次に、いい友達を作ろう。百人に出会っても三人位しか面白いやつはいないもの。つまらない者とつきあうことはない。もし大学に行く機会があればそれもいい。大切な時期に自分の時間がたくさんとれるし、いい友達と出会えることも多い。良き友は人生最高のボーナスだ。
最後に、いい本を読もう。これからの時期、迷うこと、誰にも相談できないことがたくさんでてくる。私は今でも迷っているが。闇の中で自分の手を引いてくれるのはいい本だけ。以下に役に立つかもしれない本をリストしておく。本は読むタイミングが大切。今、もし面白くなければまた別の時に読んだらいい。でも二十歳頃までにはこれらは最低限読破して欲しい。
「フラニーとゾーイー」サリンジャー、「復活」トルストイ、「白痴」ドストエフスキー。これらは本物のラブストーリー。安っぽい恋愛小説もマンガももう読んでいられなくなる。
「シェークスピア全集」。海外に出た時、たとえ英語が下手でもシェークスピアは全部読んだと言うと、それだけで一目置かれることになる。そんなことが役にたつこともきっとある。
「生きるのが楽しくなる十五の習慣」日野原重明。実際にお会いすると先生はとても温かいオーラを発散されている。生き方はこんな方から学びたい。私の生花をとても褒めて下さった。
「竜馬が行く」司馬遼太郎、「日本史集中講義」井沢元彦、「信長」坂口安吾。歴史関連の本は沢山読もう。様々なことに興味が出てくるし、旅行していても楽しみが増える。そして、第二次大戦についてもしっかり考えよう。いろいろな意見があるから混乱するだろうが。君達の曽祖父はニューギニアのビアク島の戦闘で戦死した五千の一人だったことも覚えておこう。戦地からの写真に書き添えた「アジアの黎明のために」という言葉の意味もいつか分かってあげよう。その程度の勉強が自分でできないならば怠慢かつ無礼だ。学校の勉強だけでは駄目、不十分。
あとは解説無し。「道は開ける」カーネギー、「日記」J・グリーン、「人間を見つめて」神谷美恵子、「遥かなノートラダム」森有正、"Man’s Search for Meaning”フランクル。邦題は「夜と霧」かな?原書も難しくない。読んでみよ。と言っても無茶か。少々難しい本が並んでしまったね。では、追加で今すぐ君達が読めて、読書の大切さを教えてくれる名作をいくつか。「太陽の子」灰谷健次郎、「雪の降るくに」本間芳男、「君たちはどう生きるか」吉野源三郎、「ナルニア物語」ルイス(うちの家内のお勧め)、「三国志」(児童向けの簡略版でいい)、「赤毛のアン」モンゴメリ。「十五少年漂流記」ヴェルヌ。今は濫読でいい。やがて自分の問題意識が芽生えてくる。「幸福とは何か」「この短い生にどんな意味があるのか」等々。すると読書は本物になる。そこが分かった頃に一杯やろうではないか。