華道家 新保逍滄

2020年3月9日

いけ花とモダニズム:自由花の確立に向けて



華道史の中でも、1920年代からの数十年間は、私にはとても興味深い時期です。
生け花人口は増えていく、
新しい流派が次々生まれる、
生け花戦国時代などと名付けた方もありますね。

西洋モダニズムの影響を受け、生け花はこのままではいけないと、重森三玲の元に勅使河原蒼風、小原豊雲、中川幸夫らが集まって、生け花改革を目論んでいたり、新しい自由花に異を唱えるグループがあったり。いつか自分なりに辿ってみたいと思っています。

今、思いつく仮説がいくつかあります。きちんと検証していかないといけませんが。
「自由花の成立には生け花の原点への回帰という性格があったのではないか」

つまり、生け花に西洋流の芸術の方法を取り入れ、自由花を確立しようという試みは、生け花の本質の探求を推進はしたけれど、最終的に生け花の西洋化はもたらさなかったのではないか。

そんなことを考えつつ、書き始めた日本語のエッセーは以下の通りです。

このブログでも「専応口伝の謎」として何度か書いたトピックです。

続きは、「いけ花文化研究」第8号に掲載される予定です。
自由花の提唱者が主張した「生命」を東洋思想史の中で捉えられないかと思っています。ただ、そう思った途端、困難がもやもやと思い浮かびます。

しかし、モダニズムにさらされ、生け花をどうしよう、
どうしたら当時の現代的な課題に答えられるのか、と華道家たちが熱く燃えていた時代があったのです。そこが私には面白いのです。

現代はどうでしょう。
ポストモダンの時代にあって、喫緊の現代的な課題ははっきりしているのに、生け花からなんの提案もない。安穏としたものです。

もちろん、私に生け花の現状が全て分かっているわけではないのです。
むしろ、何も分かっていないと言われても仕方ないほどですが。

管見ですが、モダニズムの時代に有効であった古臭い提案を繰り返すだけだったり、威厳のあるような態度を作ることに専心し、それが傷つきはしないかと汲々としているだけのように思えます。

それが最も露わになる卑近な例は、コンクールなどに対する嫌悪あるいは過剰な反応。結局、怖いのでしょうか。瑣末なことなのになあ、もっと大きい問題があるのになあと思います。とはいえ、攻撃的になるのでなければ、問題はないのですが。

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