華道家 新保逍滄

2017年11月4日

21世紀的いけ花考 第64回


 現在の生け花に多大な影響を与えた重森三玲の芸術観。それを世界(というか西洋)の芸術史に照らして考えてみましょう。重森が草月流初代家元勅使河原蒼風、小原流家元小原豊雲らと生け花の改革に取り組んでいたのは大正末から昭和の初め。重森は「生け花は芸術だ」と主張したわけですが、彼の考える芸術とは19世紀後期から20世紀初期の西洋モダニズム芸術でしょう。彼の名前自体、ミレーから拝借したものですし、抽象芸術(初期フォーマリズム)の火付け役、カンディンスキーなども彼の崇敬した芸術家であったようです。

 モダニズムとはどのような芸術運動なのでしょう?ここを理解しておくのは重要です。現在、華道の3大流派とされる池坊、草月、小原のうち戦後飛躍的に伸長した草月、小原など前衛生け花諸流派の主張は「生け花は芸術だ」でした。モダニズムの芸術だということ。そして、日本の伝統的な生け花、精神修養としての生け花を否定したわけです。

 もちろん、全面的に否定することはできませんし、曖昧な部分も多かったでしょう。もしかすると掛け声ばかりで、中身は伝統的な要素を温存させていたということだったかもしれません。また、流派によっては、重森の影響を受けはしたけれど、その思想を変容させていったという場合もあるでしょう(草月流における勅使原宏の仕事のように)。

 しかし、建前は生け花の革新だったのです。そして、それが多くの日本人を惹きつけ、戦後、前代未聞の生け花ブームを巻き起こしたのです。

 海外に生け花人口を増やすことに最も成功したのは草月でしょう。実は、草月とは言わば日本文化と西洋文化の混成。西洋化した生け花。「日本文化だと思って生け花を勉強していたら、中身はどうも(今や時代遅れとなった)モダニズムじゃないか」ということにもなりかねない。

 さて、以上を踏まえると、またもや様々な疑問が生じてきます。それらをリストアップし、整理しておかないと大変なことになりそうです。枝葉末節にこだわらず、「生け花とは何か?」「生け花はどこへ向かうべきか?」などについて、大胆に推論し、現代の生け花の可能性を過激に探っていきましょう。

 今回紹介するのは、最近の結婚式装花の一部。私は彫刻に庭園デザイン、インスタレーション、ブーケも手がけますので、こんな大層な依頼がきます。マイヤーのミューラルホールを2000本のバラで彩りました。 

 ホストすることで、収益もあり、募金もできる私たちの生け花ワークショップ。11月はMade in JapanKazari で開催です。開催希望の企業、団体、募集中です。顧客リストをお持ちのビジネスに最適のイベントです。


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