華道家 新保逍滄

2023年2月24日

我慢・我慢

 


海外で生け花の先生方と接していると、ここは我慢だな、と感じることが時にあります。きっともうすぐ状況は変わってくる、と思ってはいますが。

先生方への要望はあります。
しかし、非難でも、愚痴でも、嘲弄でもなく、「もう少し勉強なさいませんか」という要望を伝えるのはなかなか難しいものです。

例えば、大変親切な生け花の先生がいらっしゃいます。
私のためにわざわざ時間を割いて、お話して下さいます。
「いいかい、生け花というのはね、云々」
「天地人と言って、宇宙を表すものでね・・・」
そこで、私が「それは、歴史的には、象徴的表現を説明的表現と勘違いしたもので」と口を挟むや、「そこは大事じゃない」と私を制し、ご自分の御高説を滔々と話し続けられるわけです。

失礼ながらこの方はいけばなに関する英文書籍を2、3冊は読んでおられると思います。一般向けのガイドブックのようなものが出ています。
しかし、それで生け花の大家のようにお話をなさるには、相手があまり良くない。
「これを読んで勉強しなさい」とご自分の書かれた2ページほどの生け花論を手渡して下さいました。

もちろん、私は礼儀正しいですから、黙って聞いて、お礼申し上げましたが(それでなくても傲慢な奴と思われかねない)、いろいろ考えていました。

・ 早く終わらないかな?(失礼)
・ 私の論文、ひとつでいいから読んで欲しいな。まずは、"Ikebana in English" かな。
・ いけ花文化研究ならエッセーも論文も無料で読み放題なのにな。
・ 国際いけ花学会の例会に参加されれば、もう少し深い知識が得られるのにな、とか。

ただ、数十年前と比べ、現在、格段に情報量も増え、情報へのアクセスもしやすくなっています。生け花に対する一般の人たちの理解も深まっています。間もなくもう少し努力し、勉強しないと先生としてやっていくのが困難という事態になるはずです。生け花の世界では通常の教職と異なり、専門知識が少なくとも技術さえあれば教授とか立派なタイトルをいただけるようになっているようですが、そのメッキがすぐに剥がれるということになるでしょう。

例えば、昨年、ある新聞に私のことが取り上げられました。
短いインタビューでしたので、あまり期待していなかったのですが、なんとも深い記事に仕上げていただきました。専門外の方でも生け花に対し、これほどの深い理解を示しておられるのです。

ですから、あともう少しの我慢だなと思っています。

国際いけ花学会の次回例会が3月25日に開催されます。
内容は生け花教師どなたにとっても(流派に関わらず)とても価値のある内容になるはずです。ご自宅で聴講でき、しかも無料です。
ぜひご活用下さい。

2023年2月23日

『専応口伝』における「面かげ」の形而上学

 


新しいエッセーが出版されました。よろしければリンク先からダウンロードして目を通していただければ幸いです。今回は日本語版と英語版両方が出版される予定ですが、以下のリンクは日本語版です。


新保逍滄(2023)『専応口伝』における「面かげ」の形而上学International Journal of Ikebana Studies,10, 21-28.

https://doi.org/10.57290/ikebana.10.0_21


『専応口伝』についてはこのブログでも何度も書いています。そこにはどうも謎の部分があって、私にとってはとても気になる問題でした。ようやく納得のいく形で出版できたので一安心です。

生け花についてあれこれ考え、どうして外国人に教えるのはこうも難しいのだろうと日々悩んできたことの延長線上にこの論文ができたように感じています。「生け花とは何か」ということが、ここで自分なりに了解できたようにも思います。そしてここからいろいろな問題にまた発展していけるのではないかなと。

日本の古典は私の専門分野ではないので、様々なご意見、ご批判をいただくことになってしまいましたが、しばらくは、この問題に戻ってくる必要はないでしょう。その点でも安心です。

生け花の定義に関わる問題なので、いろいろ批判されたり、議論が起こるということになれば、なおありがたいところです。

要旨

『専応口伝』序文にディスコース分析を応用し、従来あまり注目されてこなかった序文中の主要語「よろしき面かげ」の重要性について考察してみたい。「よろしき面かげ」はもうひとつの主要語「をのずからなる姿」とともに形而上学的な文脈で理解されるべきである。「をのずからなる姿」がいけ花を大自然の象徴的表現と定義したのに対し、「よろしき面かげ」はいけ花の始原についての定義と解釈できる。専応の教えは存在の無常性を瞑想を通じて認識することで、草や花の純粋な本質を捉え、それをもとにして挿してゆくものだということになる。さらにこの点において専応のいけ花の思想は日本の美意識の典型的な内的機構とも強い関連性があることが明らかになるのである。

2023年2月19日

いけばな療法学会にて

2023年2月19日、いけばな療法学会にていけ花普及への取り組みについてお話しさせていただきました。主にメルボルンいけばなフェスティバルについて紹介させていただきました。同フェステイバルについては、このブログでも何度か取り上げていますのでご参照ください。使用したキーノートを以下に掲載します。
















2023年2月11日

花信:Hanadayori 23 ー 出展者リスト

 



オンライン華展、花信の出展者とリクエストが発表されました。https://www.ikebanafestival.com/hanadayori-2023/hanadayori-2023-update

「花信:今、世界が求める花がここに」とあるとおり世界中から様々なリクエストが集まりました。個人的な記念の花のリクエストはもちろん、華道家にもっと挑戦してほしいという趣旨のリクエストが多かったように思います。なかには生け花についてあまりご存知ないのかなと思われるような方からのリクエストもあり、これはこれで面白いですね。制作担当の方は大変でしょうが。

ありきたりの花や
自己満足な花、
他人の目にどう映るかということだけを意識した花、
現代芸術を真似したような花などを、人々は求めていないのではないでしょうか。

前回の作品集では、感涙したというような感想がいくつかありましたが、通常の華道展でそのような感想を持つ方がどれほどあるでしょう。

今回もまた本当に人を撃つ花が出展されるのではないかと楽しみにしています。生け花はこんなにすごい力を持っているんだよと世界中の方々に伝えられたらいいですね。23年度版は6月ごろ作品集公開の予定です。

ご参加いただいた華道家の皆様にお礼申し上げます。メルボルン生け花フェスティバルの一環として実施しているこの企画、次回はおそらく2年後になるでしょうが、日本からもっと出展者が増えてくれることを願っています。

Shoso Shimbo

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