華道家 新保逍滄

2018年7月27日

生け花ギャラリー賞決勝進出の条件


私たちの主催する2018年度生け花ギャラリー賞の準決勝15作品が7月に発表になりました。

この15作品は過去1年間に生け花ギャラリー・facebook に投稿された作品から選ばれます。

選ぶのは生け花ギャラリー賞委員会メンバー。全員師範を有する生け花教師。世界各地の先生がボランティアで協力して下さっています。そしてこの中から5作品が決勝進出です。私たちの審査員の先生方に送り、審査していただくのです。

この5作品の選出には、私たちの審査員の一人にご協力いただいています。日本の生け花研究家としてはおそらく最高レベルの方です。この選出はかなり難しい作業だと思います。選ばれた作品をみると、先生がとても慎重に選んで下さっていることがよくわかります。なるほどなあ、といつも感心します。結果は、まもなく発表になりますので、facebook あるいはブログにご注目下さい。

「上手くまとまっているというより、世界観のようなものがある作品が今後の伸びしろがあるのではないか」というコメントを、今回、先生からいただきました。

ここには注意すべき点が幾つかあります。

ひとつは、「上手くまとまっている」ことのもろさ、です。生徒作品ですから、初心者の作品と言っていいと思います。初心者でも上級者のある部分を真似て、それなりのまとまった作品を作ることができると思います。学習上は必須の過程です。しかし、それだけでは決勝まで行けないということです。

そのような作品には欠けているものがあります。
先生はそれを「世界観のようなもの」と表現されました。

私は、それは瞑想性ではないかと思います。最近、生徒作品を見ていてよく感じることは、瞑想を経ているかどうかが作品に生命が宿るかどうかを決める、ということです。

制作の過程で、素材をしっかり見つめ、素材と語り合い、素材を生かしているか、ということです。表現は難しくなりますが、様々な方が同じようなことを色々な表現で語っておられるはずです。

本当に瞑想し、悩み抜いて、作られた作品は判ります。

同時に、とにかく綺麗に仕上げようとか、人を驚かしてやろうというような意図で作られた作品、細部への配慮が欠けた軽率な作品、というのは安っぽくて、見ていてイライラしてきます。

その次元を突破していただきたい。

おそらく、生け花が瞑想だというような経験、生け花の喜び、というのもそこら辺にあると思います。なんとか、師範取得前に、そのような境地を体得して欲しいと思います。時間はかかりますが、そこまで到達できた方でないと、生け花ギャラリー賞決勝進出は叶わないでしょう。

今回書いたことはいつかもう少し掘り下げてまた考えてみます。

2018年7月18日

ワークショップの目的


Ikebana Workshops

Shoso Shimbo and his students conduct Ikebana workshops at a special price.
Book early. Number of tickets are limited.

When: 7 October 2018
Where: Breakfast Parlour, Abbotsford Convent, Melbourne
$35

Details

先に、生け花教師には技術指導だけでなく、指導力指導も必要ではないか、と書きました。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/07/blog-post.html

指導力のない生け花教師に将来はありません(ちょっと言い過ぎか)!
教え方が下手では、生徒が増えない、教える機会が減る。
教える機会が少なくなると、生け花も生活から遠ざかります。
どうしても生け花に費やす時間が減っていきます。
その結果、生け花の上達も限られるのです。
10年、20年かけて先生方を見てみればそういう結論になります。

私の生徒から力のある教師を育てたい。
すると指導力指導にも力を入れざるをえません。
10年、20年計画です。

指導力指導の一環として、まもなく開催する生け花展でワークショップを同時開催し、
私の生徒たち(新人教師、上級の生徒)に指導実習をしてもらおうと思っています。
いろいろ配慮する点があります。

料金も適当に設定しないといけないでしょう。
高すぎては満席にならず、また文句も出やすくなる。
安すぎては赤字になる。ビジネスマンと自負する私には赤字のオプションはありえません。
限られた時間内にたくさんの生徒に指導の機会を作るため、少人数クラスとし、多数のセッションを設けます。定員9人のクラスを8回予定しています。
新しい生徒獲得と、新人教師、教師予備軍の実習という二つの目的を持っていますから。
参加した生徒(クライアント)にはアンケートに答えてもらい、良かったところ、改良すべき点をフィードバックしてもらいます。きついコメントがあるかもしれません。お金を頂く以上、覚悟しないといけません。

私の生徒たちも大変ですが、どうなるか、楽しみです。

2018年7月16日

2018年度生け花ギャラリー賞準決勝


恒例の生け花ギャラリー賞、準決勝進出作品が発表となりました。ぜひご覧ください。
https://ikebanaaustralia.blogspot.com/2018/07/semi-finalists-for-ikebana-gallery.html
Facebookは以下になります。人気投票も受け付けていますので、よければご参加ください。
https://www.facebook.com/IkebanaGallery/

この賞創設の意図についてはあちこちで書いています。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2018/05/blog-post_28.html

最大の動機は、生け花をキャリアとして取り組んでいきたいという方を助けたいということ。
特に、海外では、生け花で幾らかの収入を得るということ自体、なかなか難しい。
海外で生け花をキャリアにできるという人は極めて少ないのです。
幸運にも、私はその一人です。
とはいえ、日本とは状況が違います。
私の活動範囲はおそらく日本の一般の生け花教師よりはるかに広いでしょう。
私の状況については、別の機会に書くことがあるかもしれません。

ともかく、

私は、海外で生け花で収入を得る人がもっと増えてほしいと思っています。
教室を運営するのが一般的でしょうが、そのような形でいいですから、生け花で稼いでほしいと思っています。

なぜか?

それが生け花を人生の一部として、継続させるきっかけになるからです。
上達し続けるためにも、実際に指導していくということが大切だと思っています。
生徒にもそのように説得しています。
商業的な機会を積極的につかめ、と促しています。
そんなことを言っているのは私くらいでしょうが。
それには理由があります。

私は海外で生け花が上手だなと関心した人々に何人か会っています。
しかし、同時に、数年経つと、生け花をやめていたり、
ちっとも進歩していなかったり、
そういう人が多いのです。

それに対し、以前それほど上手とも思えなかった方が、
数年でとても進歩していることもあります。
そういう方は決まって、指導などの活動をされています。

生け花の上達には時間がかかります。
その長い修行を継続させることはどうしたら可能か?
最もてっとり早いのは生け花が幾ばくかの収入源になってくれること。

そこまで考えて、サポート策を考えている生け花教師は、おそらく私一人かなと思います。私への共感者、賛同者が全くないですから(私の側近教師たちを除いて)。私を批判する人はありますが。
「俺はあなたの10年後を心配して、言っているんだ」
なんてアドバイスする先生はあまりいないのでしょうね。

本当は各流派が検討すべき問題です。

しかし、そこまで取り組んでいる流派は一つもありません。
海外会員を収入源としか見ていないのではないかと思うこともよくあります。
海外会員を増やしたいと意図した活動は散見します。
しかし、海外の事情を踏まえて、自立をサポートするまではいっていません。
趣味として生け花をやる人を開拓しているだけです。

おそらく、海外に最大の生け花学習者を抱えているのは草月流でしょう。
大手の草月流がこの問題について動いてくれたら素晴らしいでしょうね。

ともかく、

私の意図は、「生け花ギャラリー賞受賞」と履歴書に書ける生け花学習者、教師を増やしたいということ。

それが生徒を集めるのに役立ったり、
コンクールに出品する助けになったり、
制作依頼を得る助けになるのではないか、
それらが最大の効果でしょう。

さらに、受賞者は自信をもてるはずですし、
生け花にもっと精進しようという方が多く出てくるのではないか。
そういうところも目指しています。

 そして、もうひとつ。

今後、取り組みたいのは、生け花教師の指導力をどう伸ばすか、という問題。
技術はある、しかし、指導力がないという教師は問題です。

技術については、各流派、いろいろな取り組みがあります。
しかし、指導力については、どうでしょう?

「素晴らしい作品を作る。しかし、教え方が下手すぎ」という先生より、
「多少、技術は劣る。しかし、教え方がうまい」という先生の方が
実際には、生徒数も増え、生け花文化拡散には効果的なのです。

しかし、「海外での指導」となると言葉の問題、文化の問題などいろいろあって、一筋縄ではいきません。

今いろいろ考えているところです。

Shoso Shimbo

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