生け花の現状、将来の課題を探ろうと大上段に構えています。まず、生け花の歴史を簡単におさらいしておきましょう。簡略な華道史は何度かここで話していますが、今回はまた別の角度から。今回は生け花ブームに焦点を当てて、その成功の要諦を探ってみます。
華道史上、重要なブームは江戸時代後期、明治期、戦後と3回起こっています。室町時代、立て花が生まれ、立華に発展。江戸時代初期に立華が大成。この辺りまでは生け花は社会の上層部で細々と行われていたのでしょう。庶民は絶えず紛争に巻き込まれ、余裕がなかったはずです。
ところが江戸時代、260年間も大規模な紛争のなかった、世界史的にも稀な安定した時代でした。よく人類史上最も幸福な時代とされるパクス・ロマーナ、ローマの平和とされた時代もせいぜい200年間。しかも、必ずしも常時平和ではなかったのです。学校で習う歴史を鵜呑みにしていると、明治期に文明開化が起こり、それ以前は暗黒の封建社会などと考えがちですが、江戸時代についてきちんと考えないと日本文化の本質を見失うことになります。この特別な時代、文化、経済が大発展します。
社会が安定し、経済が発展すると、生活に余裕ができ、余暇を楽しもうということになります。特に多くの女性が余暇を求めたのは江戸時代が初めてでしょう。時間とお金ができると日本女性の関心は花に向かうようで、生け花を習いたいという需要が生まれます。ところが、当時、生け花と言ったら代表的なのは立華。制作するのに数日かかります。一般女性には、そこまでの余裕はない。せいぜい2時間位で楽しみたい。
そこで考案されたのが、生花(せいか/しょうか)。立華を大胆に簡略化。天地人という3点をおさえて、不等辺三角形を作るとそこそこの生け花ができるのです。結果、生け花人口が爆発的に増え、新流派も多数成立。これが第1回目の生け花ブームの核心。新しいニーズの特定+それに見合った商品開発=成功。3回の生け花ブームにはそれぞれの目玉商品があります。そこをおさえておけばいいのです。
さて、今年、ローン・スカルプチャー、インターナショナル・アカデミック・フォーラムで環境芸術と生け花について講演を行うことになりました。特に後者では、日本一の美術館長と尊敬する蓑豊先生とともにフューチャード・プレゼンターに。大変なことになっています。
今月紹介するのはある医院レセプションへの商業花。ハイレベルの生け花を毎週ご希望でしたら、逍滄チームの花をご検討下さい。