華道家 新保逍滄

2017年4月23日

一日一華:庭の草花で


水引とブーゲンビリア。
どちらも我が家の庭から採ったもの。

2年ぶりの日本滞在は、3週間ほどでした。
国際会議で、また日本のある私立大学で生け花について話してきました。
どちらも英語でしたが、日本の大学生には、少々、辛かったでしょうか。
初めての大学でしたから、不案内。
多数の方からお世話になりつつ、学内をうろうろしてしまいましたが、
学生も、図書館スタッフもとても親切で助かりました。

日本人学生には、英語だけでは難しいかなということで
時折、日本語で雑談を挟みました。
なぜ、私に大小、様々な仕事が次々来るのか?
それは私が締め切り期限を破ったことがないからなんです、と。
お金を頂いて、期限を決めたら、
私は逃げません。徹夜でもなんでもしてやり遂げます。
ところが、お金をいただいていながら、
ああだ、こうだと理由をつけて、仕事を未完で放り出したり、
逃げ出すアーティストも多いのだと言うと、

そんな無責任なこと、自分だってしないさ。
当たり前じゃないか。やり遂げるさ。
という顔の学生たち。
ほぼ全員がそうでした。

でも、数十人の学生のなかには、
おそらく何人かは逃げ出す人が出てくるのではないでしょうか。

芸術制作過程は絶壁と向き合うような時間が続くわけで、
なかなか苦しいのです。
本当に逃げたくます。

困難に向き合うか、逃げるか。
それは実はいろいろな場面で、私たちは日々経験しているのです。

例えば、私の講義に出席した学生にとっては、
私の英語の講義にかじりついて、ついてくるか、
もしかすると専攻に直接関係ないのかもしれませんが、
何か学べることがあるかもしれない、と頑張るか。
あるいは、「難しい」と居眠りしたり、おしゃべりしたり。
実際、ちらほらそんな学生が見受けられましたが。
そういう人は、つまり、逃げているわけです。
もちろん、あれやこれや理由や言い訳があるのは承知しています。
私の話がつまらんということも当然あるでしょう。
しかし、そういう人が芸術制作現場のような厳しい現実に直面した場合、やはり逃げ出すのではないでしょうか。私にはそう思えます。

もちろん、逃げたからといって、
それで人生が終わるわけではないでしょう。
人生は続きます。

ただ、逃げるか逃げないかという日々の決断の集積。
それは、おそらく全く別の場所へ私たちを導くことになるでしょう。

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