華道家 新保逍滄

2020年9月10日

Zoom 生花道場への序論

 

Zoom 生花道場についてはいつかきちんと成果を報告したいと思っています。失敗もありますし、成長し続けるものでしょうから、途中報告と言うことになるでしょうが。

始めてから2、3ヶ月でしかないですが、いろいろな試行錯誤を重ねてきています。ですから、いけ花で、あるいは他の科目でオンライン指導を導入したいという方に、私たちの経験は幾らかは参考にしてもらえるのではないかと思います。私たちの回り道や苦労を避けてもらうということになるかもしれません。

以前も書いたことですが、気楽に始めたのです。メルボルンのロックダウンはなかなか解除されないので、ちょっと始めてみようかといった具合。

それがとんでもないことになっている、様な気がします。

ともかくよく考えさせられます。自分の能力が試されている感じがします。

特に必要なのは、2種類の思考力ではないかと思います。

一つは、コースデザイン力。指導内容をどの様に伝えていくか、と考えていく力。これには実は私が大学院でやった応用言語学のトレーニングが役立っています。ひとつの成果は新しいいけばなカリキュラムを作ってしまったことでしょうか。国際社会に適応できるいけばなの指導モデルとは?などと考えた人はおそらく今までなかったのではないでしょうか?伝統的な指導を英語に「翻訳」する試みはあっても、そこに「創造」はあまり求められなかったのではないかと思います。

もう一つは、問題解決力。と言ってもうまく言いえていませんが。問題が起こります。その原因を分析します。そこで従来の方法を改め、根本まで掘り返し、全く新しい方法を考え出す創造力、です。実は、これは私が20代の頃に起業して、ずっとやり続けるしかなかったことです。ビジネスの世界でサバイブする根本の力だと思います。と言っても私など、スケールの小さい世界でチマチマやってきたに過ぎませんが。

こうして新しいアイディアが生まれた時というのは、実に嬉しいものです。病みつきになるほどです。もちろん、それが即、問題解決につながったり、利益につながったりということにはならないかもしれませんが。この興奮は学問でもよく味わってきました。テキストの新しい解釈に気づいた時など、これは大発見だ!などと、一人で悦に入るということになります。他の方に認めていただけるかどうか、これはまた別の問題になりますが。そんなところが私にはあります。

オンライン指導を始めてみると、次々に新しい問題が生じ、対策を練っていかないといけません。それが実感です。ですから、与えられたレールの上を安穏と生きていけばいいという生き方をしてきた人には、オンライン指導で成果を出すということは難しいかもしれません。とはいえ、不器用な私たちがあれこれ考え込んだり、つまづいているところをスイスイ乗り越えてうまくやっているという方もきっとあることでしょう。そこがこの時代の面白いところ。

ひとつの大きな課題は、ZOOMをどう指導に使うか、ということ。

オンライン指導は対面指導にかないません。マイナスの点ばかりです。でも、プラスの点もあります。そこを徹底的に洗い出していきました。

私がよく考えていたのは、織田信長の鉄砲についてのエピソードです。確かに威力はあるが、火をつけてから弾丸を発射するまで数分かかる。しかも命中率は低い。これでは戦場で使い物にならない、と多くの大名が相手にしなかったものを、信長は使い方を工夫して大きな戦力にしたという有名な話です。史実かどうかはわかりませんが、ZOOMには使い方次第で、きっと鉄砲の様な力が見つかるはずなのです。

ZOOMを従来のワークショップ型の指導の枠組みの中で使っても、それを生かし切ることにはなりません。オンライン指導をいかに対面指導に近づけるか、という発想では新しいものは生まれないでしょう。オンライン指導を対面指導の「代わりに」使うという発想ではなく、対面指導とは「別のもの」と考えて、オンライン指導の特徴、強みを活かす方法を探る方が生産的である様に思います。

結局、「学ぶ」ということを突き詰めて考え、従来の学びのモデルを壊し、新しいモデルを考えるということになりました。

もちろん、ここで「そんな新しい学習方法にはついていけない」という消費者が出てくることは当然です。その問題への対処もまた難しい。

そこで、マーケティングです。新しい学習モデルができてもそれを上手にパッケージにし、様々な方法でPRしていかないことには商品として成立しません。

私たちには大きな資本があるわけではありません。主導役の私の実力、知名度もたかが知れている。出発点がかなり厳しいのです。

ナイナイづくしの中で、あるのは優れたスタッフのみ。と言っても皆、ほとんどボランティアです。「将来、お金が入るからね、多分」と説得し、あれこれと協力してもらっているのです。

驚くのは、スタッフの熱意。「こんないけばな指導プログラム、世界で一つだけだ、誰にも真似ができない、いけばなを世界に広げることになる」などと皆、大変なプライドと情熱を持って取り組んでくれています。この熱血集団のためにも、多少でもお金になってくれるといいのですが。どうなりますか。

スタッフに協力してもらったのは、まず、親しみやすい、品のあるロゴ作成。これは欠かせません。ロゴのフォントを選ぶのにも数日議論しています。そしてYouTubeの活用。ビデオ編集、SNSの活用など、私には手の回らないことが多いのです。

日本からもZOOM 生花道場への参加者があると面白いだろうなと思っています。日本語案内はこちら。


Shoso Shimbo

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