色々な機会があるごとに生花入門レベルの雑文を書いてきました。商業誌からユネスコの学術誌まで。それらを以下のページにまとめてみました。
生け花の歴史や文化背景については、日本語でも出版物が少ないですね。井上治さん(京都芸術大学)の『花道の思想』(思文閣出版)は稀有で重要な著作です。英語となると、さらに生け花の資料が少ないですから、多少ともお役に立てるかなと思っています。生け花はただのクラフトではなく、思想的にも深いものを持っているかも?などと多少でも感じてもらえたらありがたいものです。
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「侘茶は、禅における宗教改革であった」。京都学派の哲学者、久松真一の言葉です(「茶道の哲学」)。禅が、僧のものから市民のものになったのが侘茶だということでしょう。つまり文化変容のこと。とすると疑問が生じてきます。
わかり易い例で説明しましょう。メルボルン日本祭りというのがあります。この祭りは日本の祭り… Read More
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21世紀的生け花考 第68回
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不明なのは生け花ブームを支えた若い女性の社会的な立場。専業主… Read More
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