前回でいけ花とは何かという話の結論に達したので、次に「いけ花とは芸術だろうか」という話に移ります。となると、芸術とは何かということをはっきりさせないといけませんね。これは難しい。専門家でもなかなかスパッとは答えられません。機会があったら尋ねてごらんなさい。ややこしい話につきあわせられます。いろいろな定義があるからです。正確に答えようとするとそうなってしまいます。そんな話をここでしても退屈。いけ花との関連で重要な点を門外漢がさらりとまとめておこうと思います。
まず、結論から。いけ花は芸術か?「芸術的要素はあるでしょう」。では、いけ花は現代芸術か?「99%のいけ花は現代芸術ではありません」。
いけ花が芸術との関係で問題になるのは、主に次の二点。まず、戦前、重森三玲らの新興生花宣言でいけ花が芸術だと主張された点。戦後、拡張した小原流、草月流など大流派の家元もこの宣言の影響を強く受けています。いけ花が芸術だと主張することはいけ花学習者獲得上とても効果があったのです。こんな話は以前しました。「いけ花は芸術だ」と盛んに主張した人々は芸術をどのように理解していたのでしょう?問題はなかったのでしょうか?
次に、明治以降、いけ花が西洋芸術の影響を受けて発展してきたという点。では、今、現在はどうなのでしょう?いけ花は現代芸術になれるのか?ひとつの問題は現代芸術の分かりにくさ。展覧会で「なんでこれが芸術?」と思ったことがある方も多いのでは?私が行った展覧会では、牛糞や女性の下着が飾られていたこともあります。こんなものをギャラリーに置くくらいならいけ花を置いたらいいのに!実は、現代芸術の門前には錠がかかっているのです。それを開く鍵があります。これも大きなトピックですが、簡単にお話し出来るかもしれません。そうした様々なことを考えていこうというわけです。
今月紹介するのも商業花。お手頃な値段で気軽に送ることができる箱入りの花。いけ花でそんなものができないものでしょうか。注文があるたびあれこれ思考錯誤しています。
さて、私が理事を務める国際いけ花学会の学術誌「いけ花文化研究」第二号が発刊されました。私は明治以降のいけ花に関する主要英語文献の解題を載せました。いけ花研究のための基礎的な資料になるでしょう。1冊千円ほど。詳細は以下のサイトから。
http://www.ikebana-isis.org